carc

正欲のcarcのネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

朝井リョウの同名小説の映画化。原作は朝井リョウがこのテーマに対して誠実に、かつ踏み込んで書いていました。映画も大筋は原作小説に沿っていますが、いくつか大胆な脚色も見られました。

原作との違いの一つである、八重子と大也の講義室でのシーン。八重子が心をさらけ出して発した言葉に対し、大也が『ありがとう』と伝えます。抱えているものが違う同士、本当に分かり合うことはできないかもしれないけれど、少しくらいは繋がれる部分もあるのではないかという希望を感じました。

また、映像にしかできない表現として、水の描き方がありました。
登場人物が性的欲求を抱く対象の水が、映画の中では爽やかに描かれる一方、いわゆる"性的"なシーンもあり、自分の感情も通して、登場人物と観客(当事者と非当事者)との隔たりを強く感じました。

全編通してしんどいシーンが多く、観終わった後どっと疲れましたが、原作の辛辣さはかなり薄まり、人間同士の繋がりを肯定する力のある映画だったように思います。
例え法律や社会が自分たちを理解しなくても、身近な人との繋がりを支えにすれば生きていける、そういう答えがふさわしいのかは分からないけれどそう思わせる作品でした。
carc

carc