KeiRalph

正欲のKeiRalphのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.9
小説未読です。「桐島」も好きなので、もう良い加減原作を読んでから見るべきでは、と自分でも思います。

朝井リョウ原作であれば、おおよそマイノリティとマジョリティの対比を描いた内容なのだろうという想定でしたが、今回も想定通り、否期待どうり。新垣結衣さんの素の人物像を知る由もないですが、今回のキャラ設定とのギャップを感じる事もなく、作品世界に入り込むことができました。

また、カタブツ役をやらせたら右に出るものはいなさそうな稲垣吾郎氏の検事役も良かった。法に基づく職務に就く人はみんなあんな感じでない方が良いとは思いますが、受け入れる境界を曖昧にできない因果な職業である事は伝わりました。

そして、本作の大筋である「フェティシズム」への社会的な理解ですが、LGBTQの性差の差別、更には民族への差別への理解も反省も出来ないこの国に於いては、一歩踏み込めば犯罪と結び付かれてしまう事への危うさを再認識しました。

今回の「水フェチ」はだいぶマジョリティ側に歩み寄った嗜好だと思いますが、正直、そこまで変わった嗜好でもないな…とも思ってしまいました。

何故か考えるうちに思い出したのが、昔側溝の中で数週間?暮らしていた男性がいたニュースでした。取り調べで「生まれ変わったら側溝になりたい」との供述を、気色張ってテレビなどのメディアが取り上げ、結局私の心にも植え付けられている訳ですが、側溝に入って単なる覗き行為に興じむために「側溝に入りたい」ではなく、「側溝という存在になりたい」と思う事こそが、この作品が本当に伝えるべき「生欲」なのではないか…とか思った次第です。

とはいえ、新垣結衣と磯村勇斗が並んで側溝に入る映画がヒットするとは思えない…(私はみたいですが)
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