ゆう

正欲のゆうのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.0
ダイバーシティ、ジェンダー平等、SDGs、言っとけばいいでしょ?的な、軽薄な言葉が世の中に溢れている。誰も反論できない美しい言葉には、ある種の暴力が宿る。

本映画のテーマである[多様性]という言葉には、理解してやろうという、強者の論理が見え隠れする。ともすれば、マイノリティをマジョリティに取り込んでやろうという意図すら感じることがある。

マジョリティがマイノリティを理解することは不可能である。逆も然り。

理解する/されることから逃げる。このような短絡的な結論に至ることは容易い。本作に登場するマイノリティは、周囲から理解されることを最初から諦めている。結果、悲劇的なラストを迎える。

お互いを理解することはできない、まずはそのことを理解すること。[多様性]という言葉は、理解できないということを理解する、その謙虚さを体現するものであってほしい。

原作があまりにも良いので、期待よりも不安が大きかった。商業主義にかたよらずに丁寧に作ろうという意図は伝わってきたし、演者も良かった。が、仕上がりは期待以下であった。
オーバーな音楽で場面を盛り上げようとする安っぽい演出も気になったが、なにより八重子と大也が本音で語り合うシーンは、叫び合うくらいの熱量でもっと尺を取ってほしかった(擬似セックスのシーンはもっと短くて良い)。
本作が消化不良の方はぜひ原作にあたってほしい
ゆう

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