Kae

正欲のKaeのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.1
つくづく正しいも悪いもないものだと思った。
しかし、普通の概念は確かにある。普通が薄まった世の中で、普通に忠実に生きてきた人たちも生きにくさを感じていることに気づいた。
私たちの性欲対象がたまたまルール的にセーフで倫理的にもセーフって基準になってくれていただけで、対象が違うだけで、同じ欲を抱いているのを犯罪とジャッジされることにピリつく気持ちがあった。そしてこの映画の「隔離してほしい」という切実な叫びにやるせなさを感じた。
自分の子供には、普通でいて欲しいし、多様に理解もして欲しいと思ってしまうが、到底理解は及ばないし、むしろ普通でなんていられないだろう。
今回、たまたま対象が水だったら、理解したい人が増えたかもしれないが、相手が子どもだったら、死体だったら、愛犬だったら、職場のおばさんがまともに見えるし、主人公がサイコパスに映り、寿司も不味そうに見えただろう。
柔軟な創造力と、より深い理解が優しさとなり、人を救うようになった世の中で、時代の流れに影響されない自分の考えの軸をどこに置いていいものかわからない。
つまり考えさせられたい人にはすごくいい映画だった。
それに理解される側だと思ってた自分に喝をいれてくれる作品だった。
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