橋本スパゲッティ

正欲の橋本スパゲッティのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
5.0
めちゃくちゃ久しぶりの投稿になってしまいました…
久しぶりに書こうと思えるくらいに良作。
映画に満点とか無いと思ってる上で満点をつけてる僕ですが間違いなくその中のひとつにランクインさせます。

朝井リョウの原作を良作と知り買っておきながら何故か読んでいない僕です。
事前に知っていた知識として、なんか現代っぽいジェンダーの話なんだなとうっすら思っていました。
結果的にはジェンダーだけではなく主人公と言える2人に関してはオブジェクトフィリア(対物性愛)の話なのですが、決してそれらをテーマにしている訳ではなく、あくまでテーマは「普通とは何か?」であるように感じましたね。

“水”に対して性的指向を持つ者同士でコミュニティ、作中では恋愛感情の無い夫婦関係を組んで生活をしていく訳ですが世間から見たらその性的指向は”普通では無い”と見られる。
そこにある苦しみがめちゃくちゃハッキリ伝わって来る作品でした。

その軸となる物語の横には息子の不登校から夫婦関係も崩れてしまう警察官、男性へのトラウマを抱えた女子大生、水フェチと共に小児性愛を持つ男性。
それらが全部1本の線に沿って進み、ひとつの物語として回収されていく光景にあんぐり。ガチであっぱれ。

最後、主人公カップルが再会するのでは無く、女性が警察官に問いを投げかけて終わるのが、この映画がどんな映画か表してる気がしましたね。

磯村君とか稲垣吾郎とかは演技上手いの何となく分かってたけどガッキーって改めてちゃんと女優なんだと認識しました!(失礼)
ちょっと生気の抜けた感じの演技上手かったですね〜。

スクリーンから出る時、近くの席で男女が泣いていたのと1番最前列で女性が頭抱えながら泣いていたのが印象的でした。
「面白かった!」となる映画では無いのだけれど確実に誰かに刺さる映画っていいですよね。そんな映画でした。

ジェンダー観について。他の映画に「そばかす」という去年末に公開された映画があります。そちらも不思議な映画なので是非。
(伊藤万理華出演作の宣伝を怠らない意識)