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正欲のrのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
わからないってこわいから、結局人間は自分の知っているなにかに相手を当てはめようとしてしまうんだろうな。多様性という言葉の限界を突きつけられるよね。

映画中でもダイバーシティフェスがあったけど、最近は多様性が謳われるようになって自分の生き方を表現する人たちが増えてきていて、世間の流れが本当に大きく変わった時代の転換期でもあると思う。多様性について知ろう、知りたい、知ってほしいの流れが本当に強い。もちろん物事について知っていることって、その物事について寛容な心を持てる(というか、とりたてて珍しいことだと騒ぎ立てずスルーできる)ことと同義だと思うので、人の生き方や考え方に触れられる機会は多様性社会の実現に寄与するものだとは思うんだけど、でもそういう多様性にあやかった行事行動が多すぎるせいで多様性が流行りの消費物みたいに扱われている気もしていて。そういう風潮のせいで、ある種多様性に枠みたいなものができてしまったと思うんだよね。世間に、ここからここまでは多様性、これは聞いたことないから私たちが思う「多様性」の範囲外っていう線引きを作ってしまった感じ。多様性を大事にする風潮のせいで、多様性の枠が狭められてる。たぶん。

結局、誰の生き方とも摩擦を起こさずに生きることなんて誰もできないんだから、人の生き方に寛容でありたいとか尊重したいとかされたいとかそんなこと考えず、全ての人の生き方に無関心であるべきだと思うんだよね。生き方を発信してもいいしその発信を受け取ってもいいけど、そうなんだ、へえ〜で終わればいい。そこに正解も不正解も良いも悪いもないし。わざわざ認めてもらおう!ってイベント開催する必要も、私はあなたの味方だよとかする必要もない。ていうかそもそも寛容とか尊重とか、人の生き方を自分軸で評価しようとしてるその前提が傲慢。別に私たちが寛容であるかどうかは関係なくその人たちはその人たちとしてそこにいるので。人の生き方にやいやい言わずみんな自分を生きればいい。綺麗事だろうけどね、わかってるよそれも。

しかも私もたぶん、自分の子どもが世間の「普通」からはずれた生き方をしようとしたら引き戻そうとしてしまうと思う。他人は自分に関係ないから干渉せずにいられるけど、内の人間の生き方となると話は変わってきちゃうんだよな。結局私も偏見は捨てきれてないんだなって、自分の矛盾に萎える。「子どものためを思って」、子どもの人生の邪魔をしてしまいそう。

すごくいろいろ考えさせられたけど、原作から端折られた場面も言葉も多くてちょっと残念だった。この作品が映画として世に出てきてくれたことは嬉しいけど、文章で読む方が私は好きだった。
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