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正欲のScratcherのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
1.0
原作において一番大切な、「抱いてはいけない感情なんて存在せず、小児性愛者だって性的嗜好というレイヤーで言えばヘテロセクシャルの性愛と同じ場所にあるはずなのに、なぜ彼らの欲望は見て見ぬふり、というか憎悪の対象になるのか」という部分がすっぽ抜けていて、ただ小児性愛者は欲望を叶えるためには犯罪者にしかなり得ない、という結末になってしまっているのが重大な問題だと思います。

水フェチ、ならギリ理解できるかも〜といったマジョリティの黒い特権性に冷水ぶっかけるのが『正欲』の一番大事なところなので。

映像作品と原作は別物として見るべきだとはいえ、この理解のままこの作品が広まっていくのが怖いです。特権に安住してんじゃねえよ思考しろよ思考しろ想像想像想像し続けろ、という作品だったはずなのに。なんだこれ。

性欲という気持ちの悪い普遍的なものに対する「見て見ぬふり」がなにを踏み躙っているのか、誰を阻害しているのか、ということについて立ち止まって考えるべき、ということを提唱していた作品のはずなのに、結局思考停止エンドというか。

稲垣吾郎の性的マイノリティに対する「嫌悪」の感情も、彼をステレオタイプなキャラクターに乗せて一方的に悪者に見せるだけで終わってしまっては、観ている自分にもそういう感情があって、誰かを虐げているのではないか、という視点にならないのではないか。

観客がそれを考え続けるための余白がなかったのが残念でたまりません
とにかく後半はそうじゃないでしょう、そうじゃない、の連続でした
中途半端で生ぬるい、ひどい改変でした
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