正欲ののきのネタバレレビュー・内容・結末

人とは違うベクトルの性欲をもった主人公たちの話。主人公の「ずっと地球に留学しているみたいな感覚」「無事に死ぬために生きている」という言葉が印象的。性欲に限らず、人はみんな普通じゃない一面を持ってるけど、その持って生まれた性がたまたま世間から受け入れられるものじゃなかったとき、世の中のルールに自分の性を拒まれたときに、人はどう生きていけるのか。大学で社会からドロップアウトしてしまった人たちのリアルを学んだ時から、なんとなくずっと考えていたテーマだったが、それがものすごくリアルに描かれた作品。昨今の、世の中の風潮に合わせた薄っぺらい多様性万歳の政治活動や企業広告に嫌気が刺しているのもあり、ぜひいろんな人に観てほしい。

本作とは関係ないが、”好きになると血を吸いたくなる”という性を持って生まれたヒロアカのトガヒミコというキャラクターを思い出した。一見すると猟奇的殺人犯だが、生まれ持った性によって、生きてるだけで犯罪者になってしまう当事者の生きづらさや葛藤は計り知れない。リアルなところにいくと児童性被害の問題になり、子どもの精神的・肉体的ダメージを考えると断じて許されないと思うが、決して理解されない自分の性を誰にも共感されないまま、必死に普通を装って普通に生きていく辛さにも、できるだけ目を向けて考えたいと改めて思わされた。タイトルも秀逸。

セックス経験してみるシーンだけ違和感。普通を演じてた大人二人がさすがに知らなすぎて、演出として唯一わざとらしさを感じてしまった。