寿司

正欲の寿司のネタバレレビュー・内容・結末

正欲(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

大晦日や正月が本当にしんどかった自分としてはこの映画が思った以上に救いになった。あとは、職場とか地元の結婚式のビデオレターの暴力性についてもマジで共感できるし、あの「地元」の「なんか良くわかんないけど集まって近況話しとけばみんな幸せだよな」感…この世から絶滅してくれと思ってる人が自分以外にもいるのが本当に救い。

ただやはりテーマの映画で、セリフの重みはむちゃ感じたけどクロースアップが多すぎた。ガッキーの顔面と作品テーマに全幅の信頼があるのだと実感。後は、他者と同じ空間を共有できないってのをカットバックで見せてんのかなぁ。でもやりすぎでは?せめて本作の一番の魅力だと思う「擬似セックス」のシーンはそのぎこちなさも含めてツーショット長回しで見たかった。ガッキーと磯村勇斗の涙を描くためのシーンになってしまっている感。ギャグにはできないにしてもむちゃ大切なところだと思うので。あと劇伴がちょっと過剰だったのが苦手。

ただし、良いところは結構あって、まずは稲垣吾郎演じる寺井!この空虚な人物像という造形がかなり良かったように思う。初登場時にご飯と味噌汁と焼き鮭という「ザ・朝食」みたいなのを食ってる感じは結構ウザいキャラなのかと思ったが、妻が出したレトルトカレーを感謝して食う場面とか、妻へのヤキモチを風呂に入って消化するところとかは、決して単なる「保守」ではないのだろうと感じさせる。(ま、テメーがオムライスをレンチンしろやとは思ったが。)でも一方でプライドが高そうで風船以上に空っぽな存在だということがスゲー伝わってきて良かった。稲垣吾郎はマジでこの「空虚な人間像」を演じたら超一級で、前作『窓辺にて』(2022)もそうだけどそのあたりの塩梅が凄すぎると思う。

あと、ガッキーが寿司をまずそうに食ってるのも良い。脂が口の中でとろける〜!的な食い方ではない。固体のものを口に押し込んでいるという食い方(ほぼカロリーメイトの食い方)なのが良い。

最後に、寺井と一緒にいた越川役の宇野祥平さんの伏目がちな共感が良い。セリフはほぼ無いが、取り調べの際に何度か一瞬入る小さなうなずきがありがたかった。

しっかし、こういうテーマ映画って、LGBT描いときゃいんやろ的ないやらしさがありながらも、劇中に安易な「ダイバーシティ」や「寄り添い」を喝破するセリフがあるのも良かった。この映画自体がテーマに自己言及的で謙虚なのは好感がもてた。
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