クリーム

正欲のクリームのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.1
想像した事もない世界でした。水は好きだけど好きを超える事のない私に本当の所は解らない。私がやってしまいそうなNG行動は、自分が良いと思う事を他人も良いと勝手に思い込む事だと痛感しました。主演2人の自然過ぎる演技がとても良かったです。考えさせられる良作でした。

ややネタバレあらすじ↓


佐々木佳道は、世の中にあふれた情報は、明日も生きたい人の為にあるもので、自分の様に明日死んでもいい人への情報は無いと考えていた。
広島のモールで働く桐生夏月は、淡々とした毎日を過ごし、家でいつもの動画を再生し快楽を得ます。部屋は水浸し、ベットの上で水に浸っている妄想の快楽。
横浜地検·検事の寺井啓喜は、息子が不登校で、妻と衝突が絶えず、母と息子はYouTubeの配信に没頭して行きます。
啓喜は自分が常に正しいと信じ、普通である事に固執する男で、家族とは溝が出来ています。問題を抱え生きている彼等の人生が交差して行きます。



ネタバレ↓



夏月と佳道は同級生で、友人の結婚式で再会。2人は中学の頃、 学校の蛇口から大量の水を出し浴び、お互いの水への欲求を理解し合っていました。
大晦日の夜、夏月と佳道は事故がきっかけで、距離が縮まります。佳道は両親の死で広島に戻り、変わろうと思ったが無理だったと告白。 夏月はそんな彼に「私達は命の形が人と違ってる。地球に留学しているみたい。1つ1つ自分には傷付く事が、皆には楽しい事なの。一度でいいからそういう風に生きてみたかった」と言います。 それが自分の言葉に思えた佳道。2人は互いが必要不可欠な存在と気付き、結婚と言う選択をし、横浜で暮らし始めます。
ある日、水の動画サイトに自分達と同じ水に欲望を感じるであろう人物2人とコンタクトを取り、会う事になります。
その内の1人が、小児性愛者で逮捕された為、佳道まで逮捕されてしまいます。
夏月は、警察を訪れ、先日偶然商店街で、会った男が検事でした。
検事の寺井は「あり得ないと思いますが、ご夫婦は水に特別な感情をお持ちですか?」と訪ね、夏月は「必死に生きてきた者を、あり得ないって片付けられた事はありますか? 貴方が信じなくても、ここにこういう人間はいます」と…。
調停中で伝言は出来ないと言われるが「私はいなくならないから、と伝えてください」と言います。

夏月の言葉が、凄く心に突き刺さる作品でした。考えた事も無かったマイノリティの人達、彼等の人生。多様化が進み、想像を超える人達が沢山いるのだと改めて知りました。主演2人は、あんなに普段魅力的なのに性的な魅力を封印する演技って、凄いと思いました。無欲な感じが良かったです。
観賞中、たまに行く温泉施設にある「浄めの滝」を2人に経験させてあげたい!と思って観てました。
サウナー専用シャワーで、ボタンを押すと上部のシャワーから、大量の冷水がドッと落ちて来る代物です。あの2人には、至福だと思う。あれは、癖になる。
クリーム

クリーム