このレビューはネタバレを含みます
『正欲』
良い題だと思う。
正しいとか間違ってるとか。
マジョリティとかLGBTQとか。
私たち人間は常に物事を、そして他人を一般化して理解や共感しようするけど、そのようなコミュニケーションには暴力性を孕んでいる。
そこにはn=1でしか語り得ない"形"があるはずだからだ。
この作中では水に性的欲求を憶える人を描いていた。
しかし、この表現もまた適切ではないのだろう。
その欲の形はもっと複雑で「言葉」という抽象化された概念では表してきれない感覚があるんだと思う。
「地球に留学してるみたいな感覚」
枠組み化された文化社会では、その枠に収まりきらない人がいかに生きづらいのか。誰にも理解されず、孤独感を感じながら生きる絶望感は一体どんなものなのか。
そのような感覚を感じ、生きている人にとって、
「私はここにいる。」
という一言がどれだけ救いになる言葉なのか。
決してわかりえないかもしれないが、わかろうとする努力をやめてはいけないと感じた。