Kentaro

正欲のKentaroのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
3.4
多様性という欺瞞についての映画。

特殊性癖なだけで死にたいと思うか?という意見を見たが、マジョリティが規定する「普通の幸せ」が絶えず情報として押し付けられる社会で、永遠にその普通から逸脱しその幸せを享受できないことを悟ったとき、その絶望を乗り越えて生きるのは並大抵のことではないように思えた。暴露して楽になれば、という話ではなく、暴露しても理解されない限りその孤独は続くから。ほんの少しの劣等感を抱くだけで死にたくなるのに。

自分に正直になれ、という八重子に、正直な自分がそもそも歪んでいる場合どうすればいいのか、という大也の問い。八重子が自身が抱えるある種の歪みを吐露することで、大也があってはならない感情などこの世にないと八重子に諭す。八重子に向けた言葉が自身の気づきとなり、自分だけは自分を受け入れようとするシーンがよかった。
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