靜

正欲の靜のレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
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昔読んだ『デス・パフォーマンス: 倒錯と死のアモク・ジャーナル』を思い出した。医学誌やFBI資料から自慰死、自己頭蓋貫通、自己去勢、四肢切断愛好、緊縛、獣憑きなどの実例を紹介する内容で“衝撃的で理解不能な性行動”と概要には書いてあるね。すべてを鵜呑みにはしないけど、いろんな人がいるものだと思った。生殖器の生殖機能を無視しているあたりが爽快だった記憶。
あと、川のせせらぎを流れる白い下着を映したAV(それはAVなのか?)があると友人から聞いたことがあり、いろんな人のいろんな欲望があるものだと思ったことも思い出した。すべてを鵜呑みにはしないけど、「ありえない」なんてことはない。ありえる、というか、ある。ありえるかありえないかを問うことは間違った問いで、どんな忌み嫌いたくなるような欲望もあると肯定した上でそれらの欲望が具現した時に他者の尊厳を踏み躙るようなことがあるのならば罪と罰で問えば良いと思う。あるものはある、どうしたってある。
劇中「ありえない」という台詞が出てきたので、全力で「ある」と言いたくなりました。

印象的な台詞がとても多かった。「自分が喋っているのかと思ってびっくりした」と言う人を見たら、込み上げるものがあった。瞳の奥に光のない新垣結衣と、瞳を揺らすことが出来る磯村勇斗、鼻で笑わせたら一級品の稲垣吾郎が良かったね。でも映画は何か少し動きが悪い感じがしたから原作を読んでみたい。

あと『カラオケ行こ!』でわたしの心を紅に染めていった齋藤潤さんと、ずっと声を聞かせて欲しいぐらい好きな声の持ち主である鈴木康介さんが脇役で出ていたので拍手した。存在を知ったことで見つける喜びが発生してありがたい。
靜