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正欲のmofaのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.2
【ガッキーの新境地作品】

原作・・・・というよりも、
朝井リョウファンです。
この原作も、勿論読了済みで、
映画化というのを聞いて、
この作品をどんな風に実写化するのかと
不安しかなかった。
 この繊細なメッセージを、
余すことなく表現出来るモン
なんだろうかと。
しかも、
新垣結衣がキャスティングされたと聞き、
ますます、不安しかなかったのですが・・・・

いや~本当に、驚きました!
新垣結衣さんが、本当に、
素晴らしかったです。
新垣結衣さん演じた役は、
原作では、主役とかではなく、
本当に助演という位置づけなんですけど、
もう、主役のような存在感でした。

ごろーちゃんも素晴らしかったけど、
正直、新垣結衣さんが、
それを完全に凌駕した・・・
という印象を受けます。

 磯村優斗さんは、相変わらず、上手です。
どんな役も器用にこなすのに、
驚きはないですが。

 どんな役でもガッキーでしかない
新垣結衣さんが、
こういう演技をこなすとは・・・・
新垣さんにとって、
大きなターニングポイント作品として、
記憶に残りそうです。

・・・・この作品は、
来年のアカデミー対象になるのかな??
いや~総ナメしそうだけどな~。

内容的には、やはり原作を完全に・・
というのは、難しかったかな・・と
思いました。
 特に、神戸と諸橋の交流、やり取りは、
個人的に大好きな場面だったので、
そこが十分に描き切れてない
感じがしたんだけど。
原作未読だと、
唐突感があるんじゃないかと。
でも、演技が素晴らしかったですね。
演技の熱量で、突き進んだって感じ。

多様性と異端。
多様性のその向こうにある「異端」
そこにある苦悩を、きちんと描いている。
けれど、原作同様に、
題材としたのが「水」であった事に、
この作品の限界を感じた次第です。
「水」としてるけど、大きな枠では、
アセクシャルのようなものかと。
なので、自己の「癖」に加えて、
周囲からの「結婚しないのか」
「付き合ってる人はいないのか?」
というストレスも生じてくるんですよね。

「多様性」とは結局、
マジョリティが決めている事であって。
そこに入り込めない、
少数派は「異端」として存在し続ける。
 「多様性」と謳われる昨今、
それが、ゴールではないんですよね。
 
極端な話、
「異端」の中には、
「小児性愛」なども含まれると思うんです。
勿論、矢田部のように犯罪はいけない事で、問題外なんだけど。
そうではなく、本当に、
そういう「癖」を持ってしまった人も、
確実に存在しているワケで。
 そういった部分を、
スルーするしかないのが、
現社会の限界なのかな??って思うし、
朝井リョウさんなら、
その辺まで踏み込むのかな・・・と
思ったら、そうではなかったので、
物足りなさはあったかも知れない。
けれど、「多様性」というものは、
マジョリティが作り上げるもの
という点は、
非常に、新たな視点であり、
気付かされる事の多い作品では
ある事に違いはない。


原作を知らない人の評価はどうなのかな~
・・・とはいえ、本当に、
新垣さんがを筆頭に、
キャスト陣の演技が光る作品でした。

☆以下、ネタバレです☆
稲垣さんの子供がさ・・・
ユーチューバーになるとかの話で。
 コメント欄の所・・・
「そうなんだ・・」と
新たな発見をした感じでした。
 そういう目的でコメントする人も
いるんだ・・・と。
 ちょっと、勉強になりました。

この実写化で、密かに気になっていたのは、
「水」と「興奮」です。
 この辺りを、どんな風に描くのかな~・・・と思っていたし、
その表現方法が楽しみだったんですが。
 
まぁ・・・・こんな感じか・
という程度でした。
でも、残念な仕上がりではなかったです。
でも、もう一歩ほど
踏み込んでもよかったかな・・と
おもいました。
それこそ、「シェイプオブウォーター」を
是非、参考にして欲しかった!!
(サリーホーキンスの自慰行為シーンを)
でも、ガッキーにはさすがに、無理か・・・(笑)

 水と戯れるシーンも、美しいんですけど、
これまた「美しい彼」の水遊びシーンを、参考にして欲しかった!

もっと、官能的な演出があっても、
良かったのかな~と思いました。

 そして、キャスト陣の
演技の素晴らしさなんですけどね~。
新垣さんの、あの陰鬱な感じ。
正直、あの美しさ・あのスタイルの良さで、そういう部分を演じれるのかって
思っていたんですよね。
 でも、滲み出る自己肯定感の低さや、
この世に、幻滅している感じが、
本当に全身から伝わってくるんですよね。
 人生に絶望しながらも、
佐々木に再会して、
共に生きていく流れの変化、
そして、その佐々木が
結局奪われてしまった時の・・
社会に対する諦め。
 この辺の表情の変化が、
本当に秀逸だったので、
何なら、この部分は、
原作よりも繊細に描いていたように
感じるんですよね。
この2人の繋がりを、
肌で感じるというか。
 
そして、磯村優斗さんも、
同じく素晴らしい。
仲間がいると分かって、テンション上がってしまう感じとか。
ああ・・・こういう時って、
本当に周りが
見えなくなってしまうんだよね・・・
って共感しちゃう。

 ちなみに吾郎ちゃんは、
確かに「正欲」が強くはあるけれど、
夫としては、仕事をして帰ってきたら、
レンチンのご飯ばっかりでも文句を言わない、良い夫だと思いましたね。
なので、あの奥さんには、
嫌悪感しかなかった。

「多様性」と騒がれていて、
それを受け入れられない「正欲」
それを受け入れ、
オープンにしていこうとする「正欲」
 様々な正欲の中で、
「少数派」を抱えながら、
オープンにしたい人、
そうしたくな人。
 どちらであっても、
「自分らしくある」ことが1番。

自分が、その「正欲」を
ふりかざしていないか。
振り返る事の出来る、秀作だと思う。
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