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正欲のyaekoのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.3

“誰も1人でいないといいよ。”

この自分の奥で煮えている感情が、いったいなんという名前のものなのかわたしは分からない。観ていて、ただ漠然と、ジリジリとした、ザラザラとした、ジワジワとした、なにかがあって、でもどれも当てはまっていないような思いもして、言葉にできないものをずっと抱えている。

性的指向について、色々なものがあることは知っていたけど、自然物に対してもそれがあるなんて、想像さえ付かなかった。正直、それは感覚としてはあるのかなとは思うけど、理解できるかと言われたらどうだろう、と思う。でも、わたしはそれこそ映画で、理解できないこともたくさんあるけど、人間がやることは限りがないと学んだから、門扉は閉ざさずにいたいと思し、考え続けたいと思う。その先でわたしがどう言う答えを出すかは、まだ分からないけど。

“命の形が違うんよ。”と言ったガッキーの言葉がとても鮮烈に残ってる。
それにしても、それぞれの登場人物が結び付くきっかけがあまりにも苦しい。そして最後の落とし方もずんと、除夜の鐘のように響く。
普通のことを叶えられる異世界人と、叶えられない地球人の構図が皮肉めいている。この広い地球で奇跡的に巡り会えた異世界人の絆は、想像以上に強いのだろうな。

朝井リョウさんと言えば『桐島、部活やめるってよ』がセンセーショナルだったけど、わたしは本作のが物語としてのおもしろさをとても感じた。どういう時にこの話を思いついたのか、その着眼点にすごく興味がある。話の集約のさせ方も、ミステリーのようだったし、普段から考えていることでないとここまで表現するのは難しいんじゃないかと思う。これでやっと小説も読めるので、明日は本屋さん。
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