あおき

正欲のあおきのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
2.8
映画体験で初めてイラついたっつーくらい訳わかんねえ映画だった。何がしたいんだろうマジでよ。

この映画、まずアセクシャルとオブジェクトセクシャリティを含む多様な性愛の在り方を把握していることが前提で、そのうえでこの中途半端な問題提起の物語を「叩く」ことで思考を巡らす、という見方をするべきだと思う。

軽率に観てると「はあ、色んな性愛があるんですね、普通なんてどこにもないんですね。でも他人に迷惑かけたり、法に触れたら良くないよね」くらいの思考にしか至らなそう。

エモーショナルな悲劇を通して“マイノリティ”の真実を目撃したような体験…をビジネスとして展開している悪辣さを感じざるを得ない。それどころかあらゆる性愛に対する偏見を助長してしまう危険性すら持っていると感じる。

感想を書くのに時間をかけるのも勿体無いくらいなので、以下、メインストーリーへの怒りのみ書いて一旦終了させておく。他にも何人かキャラクターがいたので、気が向いたらまた加筆する。











(ネタバレあり)











多様性を扱うにあたって、その見せ方はやめた方がいいんじゃない…?みたいなシーンが多すぎて苦痛。制作側の視野の狭さ、思考の浅さが主要キャラ2人に反映されてしまっていて、2人ともその感性だと生きるの辛いのもしゃーないわ、って思うレベル。
同じセクシャリティの同志だと思ってた人物が異性愛に走った(っぽい)から窓を叩き割るとか、婚姻制度を利用して社会的普遍性を得てみるとか、ヘテロのセックスごっこをして鼻で笑うとか。
特にセックスごっこのくだり、地獄。
もう……ヘテロが思う「無性愛者がヘテロのセックスに抱く感情ってこうでしょ?」って感じですごく気持ち悪かった……見てられなかった。

***

で、それはそうとして終盤の展開も、下手に手をつけて事件たらしめるには繊細すぎるテーマ。
小児性愛を「その感情自体が容認されないセクシュアリティ=“正しくない欲”」だと定義してるけど、それとオブジェクトセクシュアリティの線引きはどうするのか、というところまで言及しないとダメじゃない?
作者が仮に浅はかに「え、他人に迷惑かけたら、法に触れたら“正しくない欲”でしょ?」くらいにしか思ってないとしたら、同性婚が認められない日本で同性婚を訴える人も正しくないの?小児性愛も実行せずに抱えて生きる分には“正しい欲”とするの?みたいなこと、思わざるを得ないんだけど。もーすっごい中途半端な触れ方だと思う。

***

良かった点は以下(のみ)。

・朝井リョウが「何者」に引き続き、学生や素人の表現文化を大切にしていること
・劇中番組がやけにリアルなこと
・子役がめっちゃ大人役に似てること

あとラストの「いなくならないから」はちょっと良かったな。何もまとまってねえけど、まとまったように聞こえる
あおき

あおき