ノラネコの呑んで観るシネマ

ウィッシュのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
4.1
なるほど、これは設定が複雑で魅力を伝えにくい。
舞台は地中海の島国ロサス。
この島に住む国民は18歳になると大魔法使いの王様に“人生の願い”を預け、彼がそれを叶えてくれるのを待ち続ける。
主人公のアーシャは、ひょんなことからそれが支配の為のシステムだと気付いてしまう。
アーシャは王様の支配からの脱出を求めて、星に願いを捧げるのだが、それに応えて星の精“スター”がやって来る。
この全ての生命は星に通じていると言う、アニミズム的世界観が説明不足でご都合主義に感じてしまうのだな。
ミュージカルシークエンスは素晴らしく、スーラの点描画を思わせる2D調の映像も良い感じ。
終わってみれば決して悪くはないのだが、基本的に100周年のディズニーアニメーションのアーカイブムービー的な色彩が強く、単体の作品としては全体が辻褄合わせの様に感じられてしまうのは、ちょっと勿体無い。
主人公はともかく、悪役の王様はその背景設定を含めて、もっと複雑なキャラクターになり得るはずだが、最終的にごく単純なクソ野郎として回収される。
御伽話の悪役魔女に、「アナ雪」のエルサで新たな視点を提示したジェニファー・リー的には、これでOKなのだろうか?
ディズニーアニメーションスタジオの作品として、クオリティは担保されているし、面白い作品になっているのは間違いない。
だが、これほど制作の前提条件に色々な制約を感じさせる作品も、過去に無かっただろう。
100周年記念作ゆえに、様々な縛りがあったんだろうなーと思ってしまった。
予告編だと生田絵梨花の歌がすごく良い感じなので、吹替版も観に行くかな。