ハーゲンダッツ村上

ウィッシュのハーゲンダッツ村上のレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
3.2
つまんなかった

とにかくキャラクターが弱いと思う。
アーシャの魅力とか動機とかが薄い。
アーシャが歴代のディズニーの主人公達と比べて、如何に個性的で魅力のあるキャラクターなのか説明できる要素がない。
彼女がディズニーのなかで1番好きなキャラクターだと思わせてくれる説得力に欠けてる。

メインのThis Wishがせっかくいい曲なのに、そこまでにアーシャの想いを描ききれてないから感動が弱い。

というか楽曲は全部いいのにどのキャラクターも弱いので、盛り上がらない。

王道なストーリーでシンプルだからこそ、キャラクターのインパクトが欠けるのは致命的だと思う。




特に勿体無いなと思うのが、主人公とヴィランの共通点を活かしきれなかったところ。

ヴィランは願いが生み出す危険性を排除したいっていう想いがあって、
だからこそ過去の話をしたり、徒党を組む可能性のある願いを嫌う傾向があった。

同時に主人公も中盤で願いを叶える代償を払うことになる。
願いなどするべきではなかったという挫折を味わうわけだよね。

ここの対比はヴィランと主人公の共通点になる。
彼らがその時にどのような行動をとるか
その違いを描くことは2人のキャラクター性を同時に高める上で必須の要素なのに適当に描かれてるのが勿体無い。



それにアーシャの仲間達も弱い
個人的にはポリコレだろうが、なんだろうが面白いキャラであれば文句ない。

それぞれに個性やバックグラウンドがあるわけで、それこそ願いというテーマ性を活かすのに最適のはず。

なのに彼らがただの愉快な仲間達で終わってしまってるのが残念すぎる。

もちろん多少は彼らが起こす波乱というものもあったし、またあの人数を丁寧に描き切るのは難しい。

でもやっぱり彼らのキャラクターは弱かったし、そこをおざなりにすることこそ、ディズニーが社会的なバッシングを避けるためのポーズとして出したキャラクターという印象を助長させてると思う。



主人公、ヴィラン、仲間、どのキャラクターをとっても、もっと描きたかった物語があったような印象をうける。
絶対適当にキャラクターを作ってるはずないし、ちゃんと考えて作り出されたはずなのよね。
それに実際、描かれないキャラクター性の深さも感じるシーンがあった。

尺の都合で描かれなかった、又はシンプルなストーリーだから排除したんだとは思うけれど、
ディズニーには少ないシーン、ちょっとした会話でキャラクター性の面白さを描く能力があるはず。

これまでの作品だって、エンタメ性とテンポ感を失わずに魅力あるキャラクター性を描いてきていたし、だからこそディズニーの映画は面白かった。



それと気になったのは映像のクオリティが低かったところ。
全体的に映像が地味だし、細部のこだわりも感じられなかった。
大味なのに迫力があるわけでもなく、キャラクターの動きの表現力も弱かった。


ポリコレだからつまらないとかではなく、本当に面白い映画ではなかった。
子ども向けだからでもなく、シンプルなストーリーだからというわけでもなく、つまんなかった。
でも楽曲は全部よかったし、描かれなかったストーリーは絶対面白いものだった。
なによりこの映画が本来持つテーマ性やそれを描く方向性は興味深く、魅力に溢れた素晴らしいものだったはず。