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ウィッシュのsyuheiのレビュー・感想・評価

ウィッシュ(2023年製作の映画)
2.5
2023年のクリス・バック&ファウン・ヴィーラスンソーン監督作品。

地中海の王国ロサス、そこでは魔法使いの国王マグニフィコが国民から願いを託されときに願いを叶えてくれる。国王の弟子になる願いを抱く18歳のアーシャは面接に趣き100歳の祖父の願いを叶えてくれるよう嘆願する。しかし国王には裏の顔がありその事実を知ったアーシャが星に願うと奇跡が起きて…。

ウォルト・ディズニー・カンパニー100周年記念作品。絵本のような質感と平面性が強調された背景の中で3Dオブジェクトを動かしており、このルックそのものが、伝統的な技法と最新テクノロジーの融合により作品を生み出し続けるディズニーという企業の作品づくりの姿勢を物語っている。

本作にはディズニーという企業の物語性が多数塗り込められており、終盤ではピーター・パンのオマージュキャラクターが出たりサイドキックがズートピア世界を示唆する発言をしたり。極めつけはスタッフクレジットで、ここまでやるかというほど100周年をお祝いする。大ファンなら嬉しいのかも知れない。

ディズニーの映画作品は観るけど「大」のつかない単なるファンの俺にはこうした祝祭演出にシラケるばかりで、よその会社の内輪の宴会を延々と見せられている気分になった。この内向性はストーリーや主人公の詰めの甘さに露骨に現れており凡庸で退屈。中盤登場する奇跡の具現化的キャラクターには呆然。

外ヅラはいいけど裏の顔を持つ強いリーダーが人々から願いを託されそれを悪用して力を得ている問題を女性たちが中心になって解決するという政治的文脈の強いプロットに、願いという抽象性の高い概念を叶う・叶わない、他者に託す・自分で持つという単純な二元論ではめ込むものだから無理がありすぎる。

お楽しみの楽曲もキャッチーさに欠け、もう一度聴きたいと思えるものはなかった。100年にわたり物語を創造してきた世界的企業が大きな節目に送り出した記念碑的作品としてはあまりにもお粗末なクオリティと言わざるを得ない。どんなプロやベテランでも気負いすぎると失敗するという実例だろう。

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