ゆかちん

アアルトのゆかちんのレビュー・感想・評価

アアルト(2020年製作の映画)
2.9
コロナ前にフィンランドに旅してから、アアルト建築や家具に興味を持ち始めた。
前に兵庫県立美術館の美術展も観たんやけど、ドキュメンタリー映画が出来たのかぁということで、観に行くことに。




フィンランド出身の世界的建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルトの人生と作品にスポットを当てたドキュメンタリー。
不朽の名作として愛され続ける「スツール60」、アイコン的アイテムである花器「アアルトベース」、自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」など、優れたデザインの家具・食器や数々の名建築を手がけたアルヴァ・アアルト。
同じく建築家であった妻アイノとともに物を創造していく過程とその人生の軌跡を、観客が映像ツアーに参加しているかのような独創的なスタイルで描き出す。
さらに、アイノと交わした手紙の数々や、同世代の建築家、友人たちの証言を通し、アアルトの知られざる素顔を浮き彫りにしていくーーー。



んー、平日の仕事帰りに観に行ったので、疲れてて所々寝てしまった笑
バックでずーっとかかるメイン音楽が絶妙に暗いんよね〜笑。


アアルトと聞くとアルヴァが有名なのだけど、実はその妻アイノが大きく貢献しているというのは美術展で知ってたのだけど、2人のやり取りとかでより実際の関係に迫る感じ。

てか、社交的でチャーミングなアルヴァは海外出張も多く、その中で「おい浮気ちゃうんかそれ😡」みたいなことも悪びれず手紙にしてアイノに送る。

それに対して、家にいるアイノの返し。
延び延びとしているアルヴァに対し、何か抑えられてそうなアイノ。
でも、アイノが「あなたが帰ってくる頃までには機嫌をなおしておきます」て書いてるのは、なんとも健気やった。
どこの国も、昔は奥さんこんな感じで我慢させられてたのかな。

ただ、アイノは当時としては画期的な女性で。
特に建築業界は男の世界。
そんな中、建築学を学び、その中でアルヴァとともに実績を積んでいるのは凄いなと。
才能を活かして働く女性の先駆者なのかな。

アルヴァは浮気みたいなことを外でしてきても、アイノへの愛はあって。
それが伝わる手紙でもあった。

万博とかで世界からも注目され、アメリカでも活躍。
そういう彼らの功績とともに、フィンランドの歴史も触れられてて、歴史の動乱の中、彼らがどう作品を残してきたのかみたいなのが興味深かった。
世界大戦やソ連侵攻とか色々あるもんね。


ドーンとしたアアルト建築の映像は、なんかちょっと怖く見えた笑。
でも、窓からの景色や光の入り方、そこで過ごす人たちがいかに快適に過ごせるのかを考えた設計。
金持ちのための建物、デザイン特化の建物、建築のための建築ではなく。

アルヴァ達は、いつも普通の人々のことを考えて、彼らがよりよい生活を送るために建築は何ができるのか考えて作ってきた。

普通の人々の心理的な、あるいは身体的なニーズに応じて、彼らの生活の役に立つために建築があるんだという考え方のもと、作っていた。

美術展のときは、病院の話に感動したんよな〜。

彼らの考え方もあるんやけど、時代的なニーズ(戦争があって破壊された建物を作り直すタイミング、庶民の生活基盤やシンプルで実用的なものが必要…)が重なり合ってたのもあるのかなーと。

図書館の階段の手すりの曲線、子供たちがなぞりながら歩いてるのが印象的。


そんなアルヴァとアイノだけど、アイノが若くして亡くなってしまう。

アルヴァはエリッサと再婚。
エリッサも才能あって、彼女とともにアルヴァも生涯現役。


でも、後半のところは、なんか少し悲しかった。
エリッサも愛してただろうけど、多分、アルヴァにとってはアイノは特別な存在だっだんじゃないかな〜と。
女性として妻として、仕事仲間として。
かけがえの無い存在だったんだろうなと。

あと、やはり時代は移りゆくもの。
アルヴァも晩年は老害みたいな扱いだったような話が出てきて、そうなんや〜と。
ずっとフィンランドの人に愛されてたのかなと思ってたけど、そうでもなかったんやね。
国内より国外の方が評価高い時あったとか。

むう。なんだか切ない。
ずっと頂点というわけではなかったんやな〜と。
でも、世代交代は必要やしな確かに。

最後、アルヴァが亡くなったときに、「旦那さんは年金受給者でしたか?」の問いにエリッサが激怒したというのも印象的。
アルヴァはずっと現役だったから。
プライドを感じたし、エリッサの強さも感じた。


アアルトの残したものをフィンランドの史実とともに辿るドキュメンタリーなんだけど、
アルヴァとアイノの愛を知る恋愛物語みたいなところもあった。

こういうパートナーに出逢えて羨ましいなとシンプルに思った。
ゆかちん

ゆかちん