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アアルトのsayayumeのレビュー・感想・評価

アアルト(2020年製作の映画)
4.0
建築家アアルト(1898-1976)の手がけた世界の建築を本人と家族、関係者の声とともにたどるドキュメンタリー。
フィンランドの気候自然に育まれた感性か、自然にも馴染む建物の数々を体験するよう。
建築は門外漢で、アアルトとそのパートナーで妻のアルノを知ったのはイッタラのガラス器からだ。機能美と曲線直線それでいて何故かどこかで知っていたような安心感。ひと目でほしくなった。
錚々たる建築家たちのインタビューに、超有名建築家であったことを知る。
天才肌で人好きのする社交的な性格、建築家だった妻アルノとの連携、アルノの死後再婚するエリッサも建築家だ。才能が満ちた世界でなおもアアルトの発想は光る。
外観はシンプルなようで(もちろん外壁等大変な拘りがあるのだが)中に入れば驚くほど開放的、外に向かい光に向かい開かれた空間。木を用いたなめらかな家具やインテリアもぴたりと添う。心が穏やかに軽やかになる。職人を大切にしたことが理解できる。
イタリアの古代中世都市に影響を受け、「人間のサイズ」を主眼に置いたという。人間のサイズに合った町、建築。日本の都市ではとても叶わぬテーマか。
村役場や森の中の自宅のしずかにあたたかな趣き。

彼の建築は個人の邸宅のほか企業、大学、大ホール、図書館など様々な国で多岐にわたる。時代の流れにより資本主義の建築家と非難されたこともあったようだ。それでも市民に広く開かれた建築が美しく機能的であることは、使う者のしあわせや子どもたちの発想にもつながると思う。

スクリーンで観るからより感じること。これもやはり有意義な映画体験だ。
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