新作 『BORDER 戦場記者×イスラム国』 鑑賞前に、須賀川拓監督の前作『戦場記者』を鑑賞。
素晴らしいドキュメンタリーだった。2022年作品だが、ある意味、今こそ見るべき作品だ。
まず、今まさに虐殺が起きている「ガザ」。当時も今ほどではないにせよ、ハマスとイスラエル軍の衝突が激化していた。
「ハマスとネタニヤフにとって人の命はチェスの駒だ」
難民キャンプへの空爆で、妻と子供4人を失った父。
「高い道徳観念とプロフェッショナル意識のもと常に正確な攻撃を行っている」とイスラエル軍将校。民間人が死ぬと「ハマスが人の盾にした」と現在と同じ理屈だ。
「アイアンドーム」というイスラエルの防空システム。バス停がシェルターになっている。
空爆を生き延び、イスラエルの攻撃の証人になると言われていた当時5ヶ月のオマルくんは今の大虐殺の中、ガザのどこかで生きているのだろうか?
戦場を取材しながら無力感に苛まれても、須賀川さんは「でも伝えないっていう選択肢はない」と呟く。
「イスラエルとガザの戦いは、もう当事者同士では止められない。どうやったらこの戦争が終わるのか?」
まさに現在、戦いというよりイスラエルによる虐殺は誰にも止められずに進んでいる。
後半は、この年(2022)、まさに始まったばかりの「ウクライナ戦争」と、アメリカが撤退した後の混迷する「アフガニスタン」を取材。
特に、アフガニスタンでは、国に見放された最下層の人々が、ドラッグに溺れ、放置された死体と共に暮らす橋の下の光景に驚愕した。
作品最後に須賀川さんは「やはり家族が一番大事」というけれど、命懸けで世界の紛争地を取材する姿に感銘を受けた。彼らのおかげで我々はテレビなどを通して、ウクライナやガザの惨状を知ることができるのだが、取材中いつミサイルが飛んでくるとも限らない。戦場記者たちに万が一が訪れないことを心から願う。
新作『BORDER 戦場記者×イスラム国』も期待している。