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西部戦線異状なしのdalichokoのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
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残酷なほどの美しさ

1929年に出版された原作を、翌年1930年に早くも映画化された作品とこの映画を比較すると、原作が同じなので当然に大筋は変わらないが、映画としての狙いは全く異なる。別の映画である。1930年作品のマイルストン作品は、極めて情緒的で詩的な表現が多く、特にラスト、蝶に手をのばして主人公が死んでゆくシーンは極めて感動的だが、本作は究極のリアリズムを追求している。そのあまりにも残酷なシーンの臨場感が、映画全体の美しさと対比的だ。

この映画の表現は、対位法で貫かれている。

残酷なシーンときれいな風景。戦場の残飯と将軍たちが食べる温かみのある料理。生きるか死ぬかという対比の中で、戦場の現実が映し出される。1930年作品と重なるシーンは多くないが、冒頭の戦意高揚を煽る教室のシーンと、主人公パウル(1930年ではポール)がフランス兵を刺し殺して、ポケットから家族の写真と取り出すシーンを除けば、ほとんど別の物語のようだ。
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