大道幸之丞

西部戦線異状なしの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

1928年の長編小説の2度めの映画化。近年の戦争映画は「プライベート・ライアン」「ダンケルク」もそうだが、戦争に関わった個人に焦点をあて、その視点から描く構成が多い。

本作も学生パウル個人をフィーチャーしている。時代は第一次世界大戦、つまりフランスにドイツが敗れる戦争。原作にはない休戦交渉の場面も描かれる。この戦争の終わらせ方が、ナチスドイツによる戦火の始まりと因縁が続く。

——パウルは学生の友人4人と申し合わせて志願兵として戦争に参加する。しかし意気揚々と検査合格時に受け取った戦闘着はそれ以前に失意のまま戦死した同世代の少年兵の再生品であった。ここにまず「戦争の業」を感じさせる

この時代はまだ兵器と言っても大砲はあるが戦車も初期型、飛行機は複葉機、銃も単発、毒ガスも出はじめと歩兵が中心の「人と人」とが激突する戦闘が中心だ。それが故に新兵器戦車の登場シーンは霧の中から悪魔が現れるかのような表現となっている。

パウル・ボイメルはちょっとした英雄志望で参加したが、最初は一緒に志願した同級生のアルベルト・クロップ、フランツ・ミュラー、ルートヴィヒ・ベームの居場所や生存ばかりを気にしているが、当然のように一人二人と戦火に倒れるが、代わりに先輩兵士などとの友情(同志の連帯感?)が発生してゆく。

本作では徹底して「戦争という人類最大の愚」を描こうとする。中でも停戦協定が締結された後にフリードリヒ将軍がせめて「勝ち戦の形」にして終わらせたいと11:00から停戦成立にも関わらず10:45から全軍にフランス軍へ総攻撃させるところなどは愚の最たるものであった。

第二次世界大戦ではこのドイツが「機械化部隊」と呼ばれた新世代の戦争様式へ進化させたのは皮肉なもので、この作品ではまだ「人と人」との戦いであり、だからこそ「人を殺す事の意義」を問いやすいものとなっている。