たけひろ

西部戦線異状なしのたけひろのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
5.0
暗喩と皮肉が込められた軍服のエピソードが、戦争とプロパガンダの恐ろしさを物語っていた。

仲間たちとの朗らかに歌う、希望と誇りに満ち溢れた、笑顔の行進。

生きて家に帰れるとは到底信じがたい、とてつもない殺戮の戦場。

そんな地獄での日々の中、農家に忍び込んだパウルとカッツが、ガチョウと卵を盗むシーンが、印象的だった。

どちらとも。

農家の主からの銃弾には決して応戦せず、ただただ全力疾走で逃げるふたり。

特に雪原のほうでは美しくもあった。

苦楽を共にした戦友との絆。

盗んだガチョウを仲間たちと分け合って食べる。

文盲のカッツの為に、妻から届いた手紙を読み上げるパウル。

戦争の激しさ、悲惨さ、愚かさを徹底的に描いた中、戦友たちとの絆があったからこそ、休戦直前の切なさが際立っていた。

休戦協定の署名からの5時間。

1918年11月11日11時の休戦となる直前の命令に、心底驚かされた。
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