ゆりな

西部戦線異状なしのゆりなのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.7
塹壕戦が戦争映画の中でも一番辛いけれど、新しい「西武戦線異常なし」は冒頭から目も当てられないくらいエグい。
監督、ホラー映画出身じゃないよね?と疑ってしまうほど。

今回の映画は主人公から全然カメラが離れず、予備情報もなく、主人公と一緒に暗闇の戦場にいきなり放り込まれた感がすごい。
「1917」を除き、これまでアカデミー賞にノミネートしてきた映画って、大抵はドラマ性が大きな魅力だったけれど、本作はそこまで。

これドイツが初めて作ったところと、反戦映画の点で評価が高いのか〜!
「ハッとするような綺麗な映像」と評されていて、確かに今までの戦争映画のような土埃っぽさよりも、寒々しい風景が目立つ。
酷い戦地だからこそ、フランス人とドイツ人の瞳の美しさがただ際立つ。

ロシアのウクライナ侵攻が未だ続く、この時代だからこそ意義があるのも分かる。
だけど、原作や従来の「西部戦線異常なし」とは違うため、醍醐味が薄れている気がして……。
だったら「1917」のようにオリジナル脚本じゃダメなの?
アカデミー賞の脚色賞撮る可能性があるけれど、どうなるのかな。

……と、つらつら文句言ってしまったのだけど、終盤の美しさは目を見張るものがある!
あと、いつだって戦争映画で鍵を握るのは、未来を担う子供だ。だから、カットが子供と対峙したときの笑顔は、よく出来た戦争映画の醍醐味だと思った。(「サウルの息子」もそう)

後半30分一気によかった。終盤の美しさを引き立てるための、前半の惨さと派手さだったのかな。

他の方の感想にも多くあるように、2時間半の長尺ってところだけでなく、普通にドッと疲れる!
ちょうどこの日、東日本大震災関連のツイートがバズっていて「遺体がどんな形であろうと、外見で尊厳が失われることはありません。」とあり、リンクしてしまった。

余談だけど、自分の映画の始まりは「戦場のピアニスト」と「ロード・オブ・ザ・リング(トールキンの戦時体験が元)」なので、戦争映画と切っても切り離せないなと。明日のアカデミー賞、楽しみ!
ゆりな

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