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西部戦線異状なしのandesのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
3.5
力作であるのは十分伝わるし、普遍的なレマルクの原作を再映画化して残す意義もある。ただ、映画として何を重視しているのかが不明瞭で「戦争は悲惨」という直接的なビジュアルのみが印象に残る。反面、印象に残る映画的な「カット」「シーン」は乏しい気がする。
主人公のパウルと対象的に、将軍と和平交渉に望む政治家が出でくるが、描き込みが浅く、単純な役割しか与えられていないので、必然性がよくわからない(タカ派で強権的な軍人は紋切り型)。国家間のシステム的な戦争が怖いわけで、悪役を将軍1人にしてしまうデメリットもある。
前線での「リアル」な戦場は見事だが、果たして戦争の恐ろしさはそれだけなのか。1930年版にあった主人公が学校に一時帰還するシークエンスを切ったのは残念。あれこそ、前線ではわからない「恐ろしさ」である。結局、手足が飛び散って怖い、塹壕が悲惨、っていうイメージが先行して、あえて「西部戦線異状なし」でやる必要があったのかは疑問。
決して不出来な映画ではない。ただ、題材や時流で評価されている部分もあると思う。あと、どうしても「プライベート・ライアン」的な兵士に密着する撮影・演出ではアクション映画のような側面が出てしまう。つまり、主人公の活躍にワクワクしてしまうのだ。かと言って、この映画はそこを皮肉に見せることもない。誠実な映画だと思うが、画面の凄惨さに反して意外と「平坦」な映画だと思う。
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