サトタカ

西部戦線異状なしのサトタカのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
5.0
第一次世界大戦の西部戦線、ドイツ対フランスの過酷な塹壕戦がメインで描かれる戦争映画。固定されたカメラが一歩引いて撮るような絵作りで、状況がわかりやすかった。観てるこっちは冷静に地獄を鑑賞させられてるように感じた。映画館ならまた違ったかもしれない。ダンケルクもそんな感じではあった。
愛国心をほだされ、男として一人前になりたくて、希望に燃えて志願兵となる若者たちが、最前線でいつ死ぬかわからない状況に追いやられる。最前線の歩兵は基本的に運ゲーである。運が悪ければ銃弾か爆弾で即死する。運がもっと悪ければ、火炎放射器で火だるまにされたり、負傷して長時間苦しみながら死ぬことになるだろう。(メンタル壊されて残りの人生めちゃくちゃになるのも悲惨だが)

主人公の若いドイツ兵がフランス兵と塹壕の中で取っ組み合いになって、さらに下のトンネルのようなところに転がり落ち、相対するシーンで、一瞬「おっ、どうする?」みたいな感じでフリーズするところが興味深かった。周囲の兵士たちが必死の形相で殺し合いしてるから、自分もアドレナリン全開で戦争やってるけど、人目がない状況で一対一だと怯むというか、ふと冷静になって相手を見ちゃうってことなんだろうか。同じ白人同士であるわけだけど。(これが白人vsアジア人だとまた違うと思うんよ)
周囲の目を気にしまくる日本人として、ほのか〜に共感してしまった。

あと、よく「ドゥーン…」っていう重低音をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品などで聴かされている気がしていて、個人的にもうわかった、わかった、重低音かっこいいねっ流行ってるよねってなってたんだけど、この映画ではあまりに悲惨な話過ぎて「いや、もっと低くて悲しくて盛大な重低音ドゥーン入れていいょ?控え目よ?」という気持ちになった。(戦車登場シーン)

無駄なセリフが少なく、お偉方の休戦交渉と前線の戦闘を淡々と描くストイックさが、あまりにもよかったもので、一作目の「西部戦線異常なし」も観てみるつもり。
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