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フェイブルマンズのandesのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.0
思ってたのとは違ったが、それが良かった。スピルバーグが抱えていた(過去作でも示唆されていた)家族間のモヤモヤが赤裸々に描かれており、遂に「パンツを降ろした」状態になった。
自伝的要素というか、スピルバーグを投影したようなキャラ造形は過去作でも多くあり、最近では「レディプレイヤー1」なんかもそう。自分には時折、それがノイズになってしまうこともあったが、今作は「自分の話です」と振り切れているので、逆に没入できた。
人間は複雑で、家族間が修復不可能になるのも致し方ないことが、サミーの「映画」で暴かれるところは、「真実」を映す映画の恐ろしさである。さらに、サボりデーでカメラが捉える「真実」が暴く"真実"のシークエンスは素晴らしい。人間は複雑なのである。
スピルバーグ自身も「人の気持ちがわからない」描写があるのが良い。彼はずっと心の喪失を映画制作で埋めてきたのだ。とすると、これまでのフィルモグラフィーは、「フェイブルマンズ」の伏線であったのかもしれない。彼の贖罪は全て済んだのだろうか。
重い家族モノなのだが、もちろん映画愛も炸裂している。自主制作シーンもワクワクするし、サボり日映画でローガンを撮ったシーンが「オリンピア」(1938)みたいで面白かった。もちろん、ラストシークエンスでの、「伝説の監督」登場は、分かっていてもワクワクする(待合室でのカメラの動きが素晴らしい)。色んな要素がある映画だが、どんなに辛くても、「最高の瞬間」がそれを吹き飛ばしてしまうという意外にシンプルな構図も良い。
さて、世界的有名監督の自伝的映画ながら、本作はかなりイビツな映画である。そりゃ、そうだ。"地平線"が真ん中の映画なんか、クソつまらんのだから。
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