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フェイブルマンズのsymaxのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.5
"《趣味》と言わないで…"

両親に連れられ観た"地上最大のショウ"…幼きサミーの心に刻まれた映画への情熱は衰える事なく…

サミーは、8ミリカメラを手に家族の記録として日々の生活を撮影するだけでなく、仲間達と作品も制作するまでに…そんなサミーを自身もピアニストであり芸術家肌の母は応援し、エンジニアである父は"趣味"と決めつける…

…家族で出掛けたキャンプ…そこで撮影したフィルムを編集していたサミーは、そこに映るある秘密を知り愕然とする…

スピルバーグ監督自らが"この映画はおとぎ話ではなく、私の記憶"と本作の予告編で語っているところからも、本作が監督の自伝的作品である事は予想されました。

だからこそ、"映画への愛情"溢れる感動作なのかな?との鑑賞前の印象でした。

ところが…蓋を開けてみると…一家族の崩壊を描いているようで…なんというか…自虐的?

"フェイブルマン家"の話は、そのまま"スピルバーグ家"の話なのでしょう…今や名匠と言われているスピルバーグ監督ですが、初期作品は案外、残虐で残酷、それに悪趣味…監督の"心の闇"の原点を描いた作品のようにも思えます。

更に、本作では映画が与える影響の怖さについても描いているような…人を演出し操る麻薬的楽しさ、自らも意図していなかった映画の力が持つ恐怖がそこにはあり、それを爽やかにサラッとした演出で魅せてしまうスピルバーグ監督の凄さを痛い程感じたのでした。

ここのところ、"映画への愛情"あるいは"映画への情熱"といったものをテーマとした作品が続けて公開されておりますが、本作はそういった作品とはまた違う立ち位置のような気がしてなりません…

ラストエピソードからのあの終わり方…あれ、凄くイイ…凄くズルい…
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