KnightsofOdessa

フェイブルマンズのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
[Everything Happens for a Reason] 90点

大傑作。"映画は忘れられない夢のようなもの"、それが心地よい夢でも悪夢でも等しく襲いかかる。劇場でスピルバーグを観るのは『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』以来15年ぶりで、そもそもスピルバーグ作品自体もその間のは『レディ・プレイヤー1』を機内で観た記憶しかない。毎回優先順位が低くなりがちなスピルバーグだが、今回はポール・ダノとミシェル・ウィリアムズという問題しかなさそうな夫婦が登場するということで駆けつける。事前の想像通りフェイブルマン家はぐちゃぐちゃで、一家の団欒に純度100%のセス・ローゲンがヌルっと入り込んでいる異様さが光る(『スティーヴ・ジョブズ』でウォズやってたの思い出した)。アリゾナに行かなかった祖母がロスに戻ってきたら猿抱いて食卓を囲んでるのには爆笑した。芸術と家族に引き裂かれるという伯父の言葉の通り、映画を撮ることの喜びと暴力性を描き出し、"こんなときに映画の編集"ではなく"こんなときだから映画の編集"をする一人の男を見つめる。ヤベエ家族とはいえ、全員が己の思った方向に突き進んでいくタイプの人間なので、本人を含めて誰かを悪者にしたり美化しすぎたりというのがなく、唯一無二なのに普遍的というのが凄すぎる。サムは"お前もデミルになれるぞ!"と言われていたが、60年経って、恐らくその座はスピルバーグ本人になっただろう。でもそうなるためには、映画のために母親との秘密も、ジョックスとの秘密も全世界に打ち明けねばならない。君にはその覚悟があるか。違うか。
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