このレビューはネタバレを含みます
「自伝的作品」ということだが、脚色はそこまでされてないような印象がある。それだけこの作品は物語的な整理が為されていない様な生っぽさがあった。
基本的に物語は「母親問題と映画撮影」の間の葛藤によって進行していくんだけど、母や家族を大切にする「地平線を真ん中に置いた価値観」から孤独でも映画を作る「地平線が偏った価値観」へと振り切れる事で稀代の映画監督になっていく結末が見事。多分今後の人生はきついこともあったんだろうけど楽しいことが多かったんだろうなぁと謎の親目線になった。
自分を育ててくれたものへの感謝ってもちろん大切だけど、だからといって言うことを全部聞き入れるのは違う。家族を無視する必要もある。というテーマ性を強調するには明確に家族を捨てる必要があるんだろうけど、今作は自壊したところに自伝っぽさというか「事実は小説よりも奇なり」を感じる。
母親がきっかけをくれて、大切に育ててくれた創作心を止めるはずだった家族を壊したのも母親という。良くも悪くも母親に育てられた関係性は紛れもなく「親子」
ここまで親の影響力を描いた上で、それを肯定した作品は他にないかも？
