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フェイブルマンズのpenのネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

映画を技術として語る父親、夢として諭す母親の間に立つ幼いサミー、という冒頭の場面で最初にグッときた。
夢を映し出すだけでなく、その夢をより一層輝かせる為の技術もまた映画が持つ魅力の一部と示唆しているように感じたからだ。
実際、劇中ではサミーが理想のイメージを実現させる為に創意工夫を凝らした撮影・編集の技法を発明・実践する様子が描かれており、まるで技術革新の起こりを見ているようだった。両親の喧嘩の最中にでてくる台詞に「科学者vs芸術家」というのがあるが、サミーはその両方の素質を持っていることが分かる。

一方、両親の離婚についての喧嘩の場面でその様子を撮影する自分をサミーは鏡の中に幻視する描写があり、撮ることの残酷さも映し出していた(追記:監督の意図とは違っているらしい…)。
また、高校卒業前のビーチでの模様(おサボり日って少し変な翻訳な気がする…)を撮影した映像を自分の想定した内容に則して編集した結果、映像内でコメディリリーフ的に扱われた人の怒りを買ってしまう場面がある。ここにも作る側が持つ加害性が描かれていると思った(スクールカースト上位の生徒とのやり取りも印象的だ)。

他にもミシェル・ウィリアムズやポール・ダノの演技が凄いなど細かい部分が色々あるが、何より映画として緊張感に痺れる演出が多かったのが印象深い。
演技指導を受けて泣いてしまう若者、車のライトを背景に踊る母親を見つめる三者から窺える関係性(その前からの予兆も含め)、ピアノの演奏風景と並行で進む編集作業や演奏の進行に合わせて徐々に真実が見え始める様子、編集後の映像を見て崩れ倒れる母親、いじめっ子の脅しや脅しを受けた後の学校での恐怖、祖母が亡くなる瞬間の首の動き……数え上げたらきりが無いほど素晴らしかった。
ずっと続いて欲しいと感じるほどだったが、それはスピルバーグ監督の作品を観れば良いということなんだろう。
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