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フェイブルマンズのYYamadaのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.8
【ヒューマンドラマのススメ】
 ~映画を通じて人生を学ぶ

◆作品名:
フェイブルマンズ (2022)
◆主人公のポジション
葛藤を抱え、成長する映画青年
◆該当する人間感情
 恍惚、感傷、嫌悪

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった少年サミー・フェイブルマンは、母親から8ミリカメラをプレゼントされ、家族や仲間たちと過ごす日々のなか、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求めていく。
・母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親はその夢を単なる趣味としか見なさない。サミーはそんな両親の間で葛藤しながら、さまざまな人々との出会いを通じて成長していく…。

〈見処〉
①人生の出来事、そのひとつひとつが
 映画になった——
・『フェイブルマンズ』(意訳:「フェイブルマン一家」)は、2022年に製作されたヒューマンドラマ映画。「フェイブル」は「寓話、作り話」の意味も持つ。
・監督は、本作が長編劇場公開作品監督34作目となるスティーブン・スピルバーグ。彼が映画監督になるという夢をかなえた自身の原体験をもとに映画化した自伝的作品。
・出演は、若き日のスピルバーグを元に描かれた主人公サミー役を新鋭ガブリエル・ラベルが務め、母親は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などでアカデミー賞4度のノミネートを誇るミシェル・ウィリアムズ、父親は『THE BATMAN ザ・バットマン』のポール・ダノ。共演は『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』のセス・ローゲン。
・2023年3月12日(現地時間)に開催予定の第95回アカデミー賞において、作品・監督、脚本・主演女優(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優(ジャド・ハーシュ)・美術
・作曲(ジョン・ウィリアムズ)の計7部門にノミネートされている。

②現在のスピルバーグ
・21歳にて撮影したテレビ映画『激突!』(1971)以来、「総興行収入が100億ドルを超えた初めての映画監督」スティーブン・スピルバーグは、前作『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)にて念願のリメイク作品を手掛けるなど、近年ではキャリアの集大成を締め括るような活動を見せている。
・2020年、74歳に差し掛かったスピルバーグは、本作の製作を決断した2つの出来事に直面。1つ目が新型コロナ・ウイルスによるパンデミック、もう1つが疎遠にあった父アーノルドの死。
・「やり残したことをやりたい」と強く感じたスピルバーグは、盟友の脚本家トニー・クシュナーからかつて質問を受けていた「いつ映画監督になろうと思ったのですか?」の問いに回答していた、自らの幼少期~10代の実体験に対して、『A.I.』(2001)以来20年ぶりに自ら共同脚本家の立場として、本作のストーリーを紡いでいる。
・『E.T.』(1982)など、スピルバーグによる母子家庭の経験を指摘される作品が多いなか、本作では、彼の父親が与えた影響が色濃く印象に遺している。
・「この物語を語らずにキャリアを終えるなんて、想像すらできない。私にとってこの映画はタイムマシンのような作品だ」と語るスピルバーグにとって、彼のフィルモグラフィーを飾る新たな代表作がここに誕生した。

③結び…本作の見処は?
◎: 「映像の創造は夢や希望だけではない」…。スピルバーグにとってトラウマ的な自身の経験談 をもとに描かれた本作は、深い葛藤が描かれ、非常にリアリティーの高い自伝的作品となっている。スピルバーグが全てをさらけ出す覚悟が垣間見れる脚本に注目。
◎: 本作でもアカデミー・ノミネートを受けている名優ミシェル・ウィリアムズの癖の強い母親像が注目される本作であるが、かつて『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)にて屈折した青年を演じていたポール・ダノが、立場を変えて父親を演じたポール・ダノの本作の静かな演技こそ、高く評価したい。
◎: 終盤に登場する、デイヴィッド・リンチ扮する伝説の名監督ジョン・フォード。彼が主人公サミーに与えるぶっきらぼうなアドバイスと、それを受けて、現在のスピルバーグが演出したラストシーン。「本作は集大成ではなく、まだキャリアの途上である」とスピルバーグの表明しているような遊び心溢れる演出は、本作の大きな見所のひとつ。
▲: 上映時間151分。前半部の逸話、全部要るかな?と思うほど長い。
▲: 『ニューシネマパラダイス』のような「映画愛に溢れる作品」を期待して鑑賞すると、しっぺ返しを食らう。

④本作から得られる「人生の学び」
本作の終盤に登場する「サマーバケーション」のきらびやかな映像が、見る人によっては製作者の意図に反する捉え方となることが描かれている…これは深い。
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