藍紺

フェイブルマンズの藍紺のレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
慣れ親しんできたスピルバーグ作品のほんの少しではあるが、種明かしを見せられたような映画。
激突(クラッシュ)に魅了され、映写機が映し出す映像の魔物にのめり込んでいく一人の少年の物語。初めは自分のフェティッシュを満たすために映像を撮るのだが、それが次第に喜んでくれる観客がいることに気付かされ、そしてその映像が人を傷つける凶器にもなりうるものであることを思い知る。映画の中の映画の見せ方が抜群に上手い。そしてそのカメラの加虐性も知った上でなお映像を取り続けていく凄み。無自覚から自覚的になるその切り替わりに戦慄した。
天才とそばにいる普通の人々の苦悩とか、芸術に生きることの残酷さとか、サラッと恐ろしいことが描かれていてスピルバーグの客観性とか冷徹さに震える。

好きなシーンがたくさんありすぎたけど、圧巻はプロム後の廊下での場面、「うわわわっ、これ凄いこと言ってるし言わせてる!」って興奮して身を乗り出してしまった。
そしてラスト、「あ、いけね。ちゃんと言われたことは守ってますよ」って茶目っ気たっぷりな遊び心のある演出に脱帽。

とにかくスピルバーグ先生は本当に子供を撮るのが上手ですね。みんなキラキラしてた。ジュリア・バターズちゃん、大きくなって!ガブリエル・ラベル、表情がとても魅力的。クリス・エヴァンスとシャイア・ラブーフを足して2で割ったような顔で(そう思うのは私だけかも)、これから人気が出そう。ミシェル・ウィリアムズとポール・ダノは言うまでもなく、配役が抜群にハマってた。

とんでもなく残酷なのにとんでもなく美しい、なのに何故か重くないし暗くない。芸術に魂を売った天才の諦念と覚悟みたいなものも感じられて最高に好き。
藍紺

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