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フェイブルマンズのペインのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.7
“その男、激突!(衝突)につき”

近年流行りの“映画についての映画”、
”フェリーニのアマルコルド型自伝的映画“の決定打的作品。それが御年76のスティーヴン・スピルバーグから放たれた。

前作『ウエスト・サイド・ストーリー』同様、巨匠による奇をてらわぬ堂々たる”立派な映画”といえよう(※人によってはちょっとキレイキレイ過ぎる映画という印象も与えそう)。私は本編が始まる前の“AMBLIN ENTERTAINMENT(※スピルバーグ私設の製作会社)”のロゴでうるっときてしまっていた。

しかし“キレイキレイ”とは言えど、やはりスピルバーグ印な“厭さ”はこれでもかと刻印されてもいる作品だ。どなたかが映画と実人生における“痛み”の描かれ方が“ベルイマン級”と評していたが、言い得て妙。ある種、見方によってはスピルバーグ版『ファニーとアレクサンデル』(※イングマール・ベルイマン監督)とも言える内容。

スピルバーグがフランソワ・トリュフォー好きなのは勿論周知の事実だけれど、ベルイマンも大好きで、相当に影響を受けていることが伺える。ただ見始めた時期は意外と遅かったらしい←🤔

スピルバーグの過去作では比較的どの作品に強く共鳴するものがあるかな?と考えてみたが、やはりスピルバーグ本人が脚本を手掛けた数少ない作品である『未知との遭遇』『A.I.』だろうか。自分が撮りたい自分のための極めて“私的”な作品であり、よく考えると相当に暗く不気味な変な作品。逆に近作で言えば『レディ・プレイヤー1』なんかは対照的で、“皆が待ち望む、皆がイメージするスピルバーグ!”的なものを“提供”した作品のように思う。

食事シーンなんかの汚い感じはかなり『A.I.』っぽかったし、ミシェル・ウィリアムス演じるスピルバーグ少年の母親が子どもたちを引き連れて台風の目に突っ込んでいくさまはもろに『宇宙戦争』的だった。またミシェル・ウィリアムスは本当に泣き顔が絵になる。彼女の如何にも天才の子を持つ母親といった感じのキャラクター像にはイライラする人もいそう(笑)

そしてこれはすでに公開前から情報解禁されていることなので、ネタバレでもなんでもないが、なんと言ってもデヴィッド・リンチ登場シーンにすべてを持っていかれる。映画の巨人ジョン・フォードを演じるに当って、短いシーンながら撮影2週間前に衣装を借り出し、フォードになりきるために毎日その衣装はもちろん、帽子とアイパッチも身につけて生活したそうな。おかげで撮影現場に現れた時には、新品だった衣装一式がすっかり薄汚れていたのとことで通りできったねぇなと思ったわけです(笑)
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