うりた

フェイブルマンズのうりたのネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ストーリー云々の前に一言言わせて…

リンチが!!出るなんて!!知らなかったんですけど!!!!!!
世界最高の監督は私にとってあなたです…
まさかの登場に不意をつかれて涙。
しかも素晴らしい台詞言ってくれるし…
「地平線は画面の下にあると面白い画になる。地平線は画面の上にあっても面白い画になる。地平線が真ん中にあると死ぬほどつまらない画になる。」
これって映画のテクニック論でもあるけど、人生(特に芸術家)は安定じゃなくてどっちかに振り切って生きろよっていうメッセージでもあるよね。
サミーの「感謝します」に対し葉巻咥えてニヤリと笑って「こちらこそ」っていうリンチが最高すぎて…劇場出てからも思い出し泣きしてしまった。

作品としては家族の物語を中心にストーリーが進むんだけど、冒頭の『衝突』の魅力に取り憑かれてしまうところからまず面白い。子供が何に興味持って才能伸ばすかってわからないし、可能性の目を潰さなかったお母さん素敵だった。
芸術家肌の明るいお母さんに、理論派で天才な優しいお父さん、最初は素敵な家族だな〜と思っていたけど、結局お母さんはお父さんの友達と恋に落ち、父と母は離婚することになってしまう。
お母さんが最後にサムに「心のままに生きるのよ。私に負い目はないの」みたいなこと言うんだけど、これもリンチのセリフに繋がってると思う。地平線の上か下しかないんだ、このお母さんには。

サムは自分がなんの気なく撮ったフィルムが引き金でこんなことになってしまって、自分の趣味…いや生きがいを呪ったんだろうけど、母の芸術家肌の血が流れてるのもある意味呪いみたいなもんで。
この映画は呪いの映画なんですよ。じゃなかったらもっと楽しい映画になってるはず。だけどそれでいいんだよ。離婚の瞬間すらフィルム回したいっていう描写がすごくリアルだった。

おサボり日の映像流していじめっ子と和解(ではないが)するシーンが良かったです。
虚像が実物を苦しめるのもまた映画の呪いなんだなぁ…。
うりた

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