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フェイブルマンズのriverのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.8
映画に心酔し、映画に魂を捧げた少年の物語。スピルバーグの少年時代がベースとなるが、伝記映画のように主人公の偉大さが強調されることはなく、映画好きな少年のささやかな日常が、慈しみ深く描かれる。

両親との葛藤や引っ越し、学校での問題など、誰にでも起こり得る出来事が、過去を眺めているのではなく、リアルで切実な問題として胸に迫った。

スピルバーグ自身が過去の自分を撮影している構成で、それはとても上手く出来ているのに、そんなギミックを意識させられることはなく(スピルバーグがモデルということも忘れ)スクリーンの少年に深く共感してしまう。

特に気に入っているのは、ジャド・ハーシュ演じる叔父さんが、主人公に芸術(映画)の祝福と呪いを説くシークエンス。ここだけは白昼夢のような非現実感があり、魔女から不吉な予言を受けるマクベスのように神話的な趣もあった。ジャド・ハーシュはとても好きな俳優で、短いが印象的な役どころで貫禄ある素晴らしい演技。(キー・ホイ・クァンと同時期だったのは惜しまれるが、アカデミー賞にノミネートされたことも嬉しかった)プロムの一連のシークエンスも最高。

80年代以降、久しぶりにスピルバーグに魔法をかけられ、幸せな気分で映画に浸ることができた。
Filmarksを始めて以来、最高得点。
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