ぼっちザうぉっちゃー

フェイブルマンズのぼっちザうぉっちゃーのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.1
とてもチャーミングで素敵な作品だった。

『フェイブルマン“ズ”』とあるように、あくまでフェイブルマン家の家族の物語を軸として、その折に触れる形でサミーが映画人になるまでの人格形成の部分や重要なハイライトが凝縮されている様子が、見応えでもあり、また観やすさでもあった。
そして転勤族で事あるごとに住む場所を変えていく一家の生き様が、自然とロードムービー的な装いも感じさせて、シンプルに楽しかった。

映画の原体験が「恐怖」に近い衝撃にあるようなところには、確かにと思った。
幼少の頃の映画館に対するイメージと言えば専ら「音も映像もデカくておっかない」だったものな。

作中で映画を上映するシーンのほとんどにおいて、その内容とサミーの置かれた情況とがちぐはぐな印象であったところに、夢と現実や、輝かしさと代償といったテーマを感じたりした。ただ生粋の映画の人であったサミーにとってそれは、「映画」と「家族」といったような二項対立ではなく、あくまで「映画」として映してしまったものに対する葛藤であって、とことん引きで物語が撮られていることに少しの衝撃を覚えたりもした。

そんな様子で全体として温雅で落ち着いた作風なんだけれど、所々でしっかり共感と渋みを胸に残すような茶目っ気と慈しみに溢れていて、すごく心地が良かった。

ラストカットなんかはもうある種禁じ手みたいな表現で、巨匠スピルバーグの「まだまだこれからっす」という姿勢が見えたりして、なんだか色んな意味で役者が違うなと思わされた。
めっちゃ素敵な監督やん。。。

とりあえずジョン・フォード監督作は確実に履修させていただきます。