tetsu3

フェイブルマンズのtetsu3のレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.0
スピルバーグが、ご両親に捧げたこの作品は、まさに彼の人生をトレースしたものだ。

ユダヤ人の家庭に生まれたこと、家族構成や両親の職業、引っ越し、最初の映画、そして、ジョン・フォード(リンチ!)との出会い…、
もう、スピルバーグの人生そのものだ。

残念ながら、父親と母親の感情や行動等はまったく理解ができなかった。
ただ、少なくとも、サミー(=スティーヴン)は、この父親と母親の下で育ち、映画に出逢い、両親のそれぞれの影響(エンジニアと芸術性)を色濃く受け、映画を撮ること、観客を楽しませることが生きがいになった。
映画監督としての自分の下地が"家族"だということをわかっているから、この"The Fabelmans"というタイトルなんだろう。

僕が小学生から、この歳になるまで、映画が大好きな人生を送ることができているのは、彼の作り出した作品から大きな影響を受けているから、ということは間違いない。
そんな原点を見せてもらったことは意義深い。


映像というのは、時に残酷だ。

劇中にも描かれているが、事実を刻み、それが存在し続けること、それは瞬間瞬間の記憶とは全く異なる。フィルムに残る所作、表情、空気感、それらはありのままを映し、そしてそれは変わらずに残る。
それを観る側が変わったとしても。

スポーツマンの彼が、キラキラした自分の姿を観て感情が爆発したのも、とても良くわかる。
フィルムに刻まれるのは事実そのままだけではないからだ。
撮り方、演出、カット割り等、フィルムに何を入れて、何を入れないかで、観る側に訴えかけるものが変わってくる。
その怖さを彼は感じたのだろう。
フィルムに映る自分が自分以上に輝いていて、自分自身とのギャップに対して。
本質的には、間抜けに映った彼と全く同じ。
いじめに対するサミーの小さな復讐。
作る側の意図や才能によって、出来上がるものは大きく変わる。
そう、地平線の位置で、その絵が面白さが変わるようにね。

それが、映像とそれを物語にした映画の醍醐味であることをスピルバーグは作り手として、自伝的映画を通じて僕らに伝えてくる。

ユーモアに富んだ素晴らしい形でこの作品は幕を下ろす。

そして、
彼の物語は誰もが知ってるお話へと…。
tetsu3

tetsu3