ないで

フェイブルマンズのないでのネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

スピルバーグ監督の自伝的作品ということで、ユダヤ系の少年サミー・フェイブルマンが両親に連れられて初めて映画を観た日から、いよいよ映画人となるべくスタジオに足を踏み入れる瞬間までが描かれていました。

ミシェル・ウィリアムズ演じる母親にはどこか『シャッターアイランド』での役柄を思わせるようなクレージーな所があって、一見幸せそうな幼年期の家族の風景には常に微かな緊張感が潜んでいる。天才のパパと芸術家のママの間にある確執が、幼い子供たちには見えていない訳ですが、不自然にママの隣にいる「おじさん」の姿を取ったそれが、いつしかママを連れ去ってしまうだろう事に、他ならぬママが勧めてくれたカメラ越しに少年は気付き始める。

サミーの世界は父母が教えてくれた映像の世界と分かち難く結びついているのに、そこに映っているのは父と母のままならぬ関係そのもので、スピルバーグほどのキャリアの人でもそんな普遍的な何かに引き裂かれ続けているという事に、なんだかガーンとなりました。インディ・ジョーンズを撮る人の原風景なんて想像した事なかったので・・・。

ラスト近くでリンチ扮するジョン・フォードにかけられた「心がズタズタになる仕事だぞ」という言葉が、またそこにハマりすぎでした。ここから先のストーリーは、これまで撮ってきた作品が全てっていう事なんだろうと思います。
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