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フェイブルマンズのvioletのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.5
壮大すぎないところが素晴らしい。
映画賛美的な内容かと思いきや、むしろ映画を撮る上での代償など、ビターな部分が淡々と描かれていく。青年時代のスピルバーグは、ただ純粋に映画に心酔していたわけではなかったんだと知った。

物事に対する観察力やクリエイティビティといった、スピルバーグの才能を疑似体験できたりもする。それらを映像という形で最も適切に可視化できるのはスピルバーグ本人なわけで、この映画をスピルバーグが撮る一番の意義はここにあるのだと思う。決して自己満映画じゃない。
映画監督として明らかに巨匠のひとりであるスピルバーグなのに、偉ぶる感じが全くない。昔から自分が憧れている先輩巨匠たちを今でも変わらない熱量で尊敬しているのが伝わるし、終始おだやかで謙虚な態度がなんとも心地よかった。

ラストシーン好きすぎるわ…
ちょっぴり滑稽味もあって、重厚すぎないこの映画の締めくくりにぴったりなエンディング。最後の最後についにスタートラインに立った主人公を見せることで、後の成功を知っている私たちは安心するし希望をもてる。セリフはないのに「今後も初心を忘れずに頑張ります」という声が聞こえてくるようで。慎ましやかな心構えに最後までやられっぱなしでした。
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