大道幸之丞

フェイブルマンズの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

スティーヴン・スピルバーグの自伝的作品。それだけに構成は練られているものの、メッセージ性に乏しく感じられ、事実の羅列のような作品に思えなくもない。

母ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)と父の親友ベニー (セス・ローゲン)との不倫から離婚までの経緯は思春期の子供に影響がないわけではなかったろう。ここでは「キャメラを覗く行為」が「ときには観たくない事実も見せられる事もある」と学ぶことになる。

サミーは幼少時に家族と行った映画館で『地上最大のショウ』を観て感動して8ミリフィルムで撮影をはじめ「映画監督」を意識し始める。

ユダヤ人であり、父のしごとの都合で転校も多かったサミーだが反ユダヤ主義者らに出会っても「映画撮影が出来る」という特技が彼を支えてくれる。失恋の傷心も乗り越えてしまう。

個人的に共感したのは大学を中退しテレビ映画制作の下働きにありついたところ。

結局熱心なサミーに感心したプロデューサーが、向かいにオフィスを構える映画監督ジョン・フォード(デイヴィッド・リンチ)に短時間でも会わせてあげようと配慮する。果たしてフォードに出会ったサミーは「映画の構図」を極めて端的にサミーへアドバイスし、サミーは雷光が当たったように感動をする。その意味ではジョン・フォードが彼の最初の師であるとも言える。

サミーの物語(スピルバーグなので)は現在も進行中。だからこの映画も20代に到達する前に完結する。

生まれた家と民族性、様々な出会いに彼はすべてを「いい方向に捉えて」来たことを感じる。そして現在の自分が「成功者」なのであれば、辛い記憶や理不尽な体験もそこにつながる「必然性」だったのだ。と断言しているように私には映った。