ソラ

フェイブルマンズのソラのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
3.7
映画好きでなくとも1作は必ず観たことがあるスティーブン・スピルバーグの自伝映画。
名脚本家トニー・クシュナーとの黄金タッグによる作品。
150分という長尺だが、観る価値あり。

彼の幼少期から映画監督として生きていく事を決心するまでの記憶をそのまま覗いた気分。
ユダヤ人として受けてきた迫害やウブな初恋、心身のトラブル、才能を持った両親の離婚。
全ての事が彼を形成し、世に送り出された素晴らしい作品達に反映されている。
余談だが、いじめっ子を自分の強みである映像で退治する快感はあった。

家族仲と芸術を突き詰めることの二項対立が主軸に置かれている。
才能は人を孤独にするのだろうか。才能を持つ者同士は互いを支え合うことは出来るだろうが、結局離れるさだめなのかもしれない。

母親の心のままに自由に生きる奔放さと未知への探究心を抱きながらもどこか俯瞰する父親の遺伝子をスティーブンは確かに受け継いでいる。

現代から見れば外連味のない電車の衝突シーンも少年の彼にすればスペクタクルで大いなるカタルシスを得たのであろう。
彼の映画への原体験を味わう事ができるのは贅沢である。
某伝説的巨匠との邂逅や慌てて地平線を1番下に持ってくる終わり方が最高。

勿論ミシェル・ウィリアムズの演技も素晴らしいが、ポール・ダノの表情で演技する芝居は印象的だった。
スティーブンは、妹の指摘にもある通り女性を映すのが苦手だが今作はかなり良かった。

彼が幼少期に味わった映画体験から得た情熱を成熟しても尚維持し続け、それどころか狂気的になる様には畏敬の念が溢れる。
彼が映画界に与えた衝撃は今後も語り継がれるだろう。

映画を作る事、心を動かす映像を撮る事の裏側には語りきれないほどの苦労があり、当然才能を持ち合わせていなければならずそれを仕事とする覚悟がある選ばれし者のみが成せる。
自分は映画を最高のエンタメとして消費する事が本分であると改めて感じた。
ソラ

ソラ