ピロシキ

その道の向こうにのピロシキのレビュー・感想・評価

その道の向こうに(2022年製作の映画)
3.8
「彼氏いるかってさっき聞かれたけど私の場合彼氏じゃなくて彼女なのよね、今はいないけどもしいるってなったら彼女なんすよ」「おぅ、そうなんだ」でサラッと次のシーンへいく感じが、なんか新しい。セクシャルマイノリティゆえの苦悩は、ここで中心に据えて語られるトピックではないのだろう。主人公を今最も苦しめるのは、PTSDである。身体は故郷へ戻っても心はずっと戦地に置きっぱなしにされているような、空虚な時間が流れている。

「あなたの気持ちわかるよ」という言葉だけで、必ずしもその人に寄り添うことができるとは限らない。互いに辛い過去を明かして、今を共有することが、人生に希望を見出すきっかけになるのかもしれない。主人公にとって、それを可能にする存在は隣にいる友人、そして収監中の兄だった。対話のシーンで交わされる言葉はどれも自然でさりげなくて、温かい。
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