大倉順憲

退屈なかもめたちの大倉順憲のレビュー・感想・評価

退屈なかもめたち(2022年製作の映画)
4.9
鈴木秀幸監督「退屈なかもめたち」(池袋シネマロサ)を観て。

退屈だ。何をいまさら劇団だ。何がチェーホフだ。時代遅れもはなはだしいぞ。
たいしたことも起こらず、たいしたキャラクターも出て来ず、たいした照明も当てず、風景も変わらない。おまけに前半はドキュメンタリー・タッチなのかカメラの手振れが気になる。後半になり、その効果がじわじわと効いてくる。「劇団とは」「演劇とは」「役者とは」。まるで神社の本殿にある真鏡のように、自分自身に問い質されてくる。「人」「他人」そして「居場所」。近頃のワークショップのように、映像作家だの俳優だの、果ては自称プロデューサーが金だけとって、演技を教えているフリをしているシステムを嘲笑うが如く、真相を突き詰めてくる。丹念にアテガキされたであろう台詞、繰り返したのか一発撮りか分からないシークエンス。後で胃にじわじわ効いてくる。ひと昔前の小劇団には必ずひとりはいたであろう勘違いの自己主張女優を演じた紀那きりこ好演。
大倉順憲

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