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N・Pのあのレビュー・感想・評価

N・P(2020年製作の映画)
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アフタートークの監督とboidの樋口さんとのやり取りが、この映画の見方を相対的表していたように思う。樋口さんはこの日たぶん調子が悪かったのか、監督との対話において自分の思考に寄せようと執拗にしていたように見える。呪いや幽霊を作品に見てとったのは確かに面白いし、納得させられる面もあったけど、監督は柔らかく応答しながらも終始そういった言葉に着地することに違和感を表明していたように思う。もっと感覚的なことなんだと。作品の内容のテーマでもあり、且つ映画制作自体のテーマでもある「翻訳」という営為について、だから言葉にするのは容易ではない。翻訳する時に生じる原作への引力と、翻訳する者の言語が原作にもたらすズレの作用を呪いといったある種のネガティブなものと捉えてこの映画を解釈するのか、あるいはそれを肯定的に捉えるのかは、もしかすれば、翻訳という跳躍の間に持続を認められるか否かの違いに思える。安易に持続へ至らず、その深い溝の淵で思考する者と、思考ではなく身体のダンスのような形で持続可能にする者との違いであるように思う。
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