なんだか小説の挿絵みたいな作品でした。
本作は全体通して登場人物の声が省略されています。
BGMもありません。
人物のセリフに字幕が付けられているだけで、音と言えば映像に合わせて取って付けたような環境音のSEがあるだけ。
状況の説明等も最小限に抑えています。
まるで、映像が挿絵になっているみたい。
小説を映像化すれば、絶対にイメージの誤差は発生します。
その誤差が大きく感じるから映像化は難しいと思っています。
しかし、本作では情報を絞りに絞る事でそのギャップを少しでも埋めようとしていました。
日本人の監督であればこの決断は出来なかった事でしょう。
その思い切りの良さに感服します。
細かな所を突っ込むと、そもそも登場人物が外国人だし部屋の小物に違和感を覚えたりします。
そして、原作読んでないと話の脈絡が全くと言っていいほど無いです。
ここまで原作読んでて良かったと思える映像作品も稀です。
逆を返せば、原作読みたくなります。
自分が何の映像を見させられたのか気にならない訳はないですから。
その他に感じたことは、主人公の母が翻訳と言う仕事に対する向き合い方を語る場面。
私は今作で一番印象的でした。
話を細切れにして、全編に渡って小出しで流すその手法から、監督が伝えたい意図を感じれたように思います。
思い詰まった時、どうしょうもなく気持ちが沈んでいる時……
頭を使わずに、出来るだけ悩みから遠い距離に心を置くこと。
人生の攻略の一つを伝えたかったのかなと感じました。
それにしても、けん玉の件は消してほしく無かったなあ笑