このレビューはネタバレを含みます
キンコーンカンコーン
放課後。
明美「あの、柴三毛先輩…!」
柴三毛「ん?だうしたの?(爽やか笑顔)」
典子「ほら明美、頑張って!」
明美「こ、これ…チョコレート、先輩のために作ったというか…貰ってくれたら嬉しいというか…食べて欲しいというか…ゴニョゴニョ…」
典子「あんたハッキリ言いなさいよ!」
明美「チョ、チョコレート貰ってくれませんか?!」
柴三毛「あ、うん!ありがとう!喜んで頂くよ。(爽やか笑顔)」
明美「あ、ありがとうございます!し、失礼します!(ダッシュで消え去る)」
柴三毛「…はぁ。これで今年はチョコレート16個目か。流石に食べ切れないよなぁ。」
絹江「あらあら、柴三毛先輩はまた後輩女子生徒からチョコレートですか?おモテになることで。」
柴三毛「なんだよ絹江。別に俺が頼んでる訳じゃないんだぜ。」
絹江「鼻の下が伸びてるわよ、フンッ。…ほら、これ(チョコを差し出す)。…義理なんだからね。バーカ!(突然、ノーパンM字開脚)」
と、不肖 柴三毛が異常に校内の女子生徒達から好意を向けられるという学園ハーレムについて頭を悩ませていたところ、30越えたオッサンの身でさういう不毛なことを真剣に考えるというのも一種の精神疾患なのではと思い至り、本作にてノイローゼで苦悩するヴァージニアに対し、他人事とは思えなくなる自分であった。
と同時に、自分で拵えた学園ハーレムに登場する女子生徒達の名前がことごとく昭和スメル濃厚であることも、自分の如何ともし難い癖(へき)を明示しているやうで、気が滅入るのであった。
明美ちゃん!
オリヴィア・デ・ハヴィランド、渾身の一作でせう。
劇中、彼女がノイローゼ重症患者として、3回くらい発狂ギリギリの大絶叫を披露するのだけど、非常に強烈だった。観ているこちらの気分が滅入って仕方なかった。本作を観るとかなり体力を削られるので、十分な睡眠と栄養のある食事を摂った上、万全の体調で鑑賞に臨むことを勧める。自分は12時間の睡眠とどんぶり飯3杯を平らげてから劇場に足を運んだ。ゲプッ。失礼。
ストーリーは、とある精神病棟にノイローゼで入院しているヴァージニア(オリヴィア・デ・ハヴィランド)の一部始終についてというもの。
だうして彼女はノイローゼになったのか?精神病棟に入院するまでの経緯は?そして彼女は快方するのか?
精神病棟の話なので、トンチキな患者が大丸百貨店の1階から7階までよろしくたくさん出てくるのだけど、インパクト大。上野動物園に負けないほどの人間動物園(檻もあるしね)。
映画初っぱなからヴァージニアは神経衰弱で記憶がメチャクチャなところを見せて我々を不安にさせる。まともにコミュニケーションが取れない。
ヴァージニアは主治医であるキック先生から最初、ショック療法ということで電気ショックを与えられるのであるが、結構気味が悪い。キック先生はヤバい奴なのでは?と観ている我々が不安になるのだけれど、結局キック先生は優秀な医者だった。
その後、ショック療法の甲斐あってコミュニケーションが最低限取れるやうになったヴァージニアは、キック先生の辛抱強いカウンセリングで、快方へと向かったり、他の人の邪魔で悪化したりを繰り返す。
キック先生の部屋にはこれ見よがしにフロイトの肖像画が掛けてあって、その手法なのかキック先生はヴァージニアに対し、彼女の幼少期からの記憶を呼び覚まし治療の鍵とする。
ヴァージニアのノイローゼの原因というのは、よくわからないけど父親に対する愛情の歪みとかなんか色々だった。
簡単にさらってみると、
幼少期、母親が構ってくれなかった
→父親に愛情を求める
→父親も構ってくれなかった
→父親を憎む
→その後すぐに父親が病死し、幼いヴァージニアは自分のせいだと思う
→学生になったヴァージニアはゴードンという彼氏ができる
→ゴードンは亡き父親によく似ていた
→ドライブデート中にゴードンから求婚され、拒絶するヴァージニア
→その直後、自動車事故に遭い、ゴードンが死に自分だけ助かるヴァージニア。いよいよ、自分のせいで人が死ぬという妄想に囚われる
→その後、大人になったヴァージニアはロバートと出会い結婚するが、過去の記憶が蘇り、自分が人を愛してはいけないという妄念に苦しみ、発狂したり神経衰弱に陥ってしまう。
みたいな感じだった。
ヴァージニアはショックを受ける度に心に蓋をしていたとかで、苦しみの原因が自分ではわからないということだった。
んで、それをキック先生が解明したことで、万事解決へと向かった(映画だしね!)。
んが!彼女が正気を取り戻すにはあと一歩必要で、そこで登場するのがタイトルにもある「蛇の穴」だった。
かつて正気を失った人をまともにするため、蛇がうじゃうじゃいる穴にその人を投げ入れて大ショックを与えることで正気に戻す、みたいな荒療治があったらしい(架空の言い伝え?)。んで、ヴァージニアは精神病棟で一番狂人が集まっている第33病棟へと入れられてしまう。右も左も狂った連中ばかりで、ヴァージニアは自分はここまでひどくないという客観視をすることで正気を取り戻すことになったのであった。
あと、キック先生が良いこと言っていたのだけど、「部屋に明かりをつけるスイッチの場所を把握することが大事だ」と言っていて、なるほどって感じだった。生きていると落ち込んだりすることが必ずあるけど、そんな時にも心のスイッチをパチンとオンにして、絶望してしまわないやうにしたいものである。
最終的にヴァージニアには退院許可が下りてめでたくハッピーエンドとなるのだけど、最後の最後まで緊張感が続き、疲れて仕方ない作品だった。
だうでも良い話だが、終盤に病棟でのダンスパーティーシーンがあり、美人歌手がスッゲー美声で歌を披露するのだけど、その歌が「遠き山に日は落ちて」のメロディで、あれって外国の歌だったんだと驚いた。
ヴァージニアは正気に戻ったが、自分はまだまだ空想の学園ハーレムに引きこもるつもりである。蛇の穴でも何でも持ってきやがれ!バーカ!
柴三毛 心の一句
「映画では ショック療法 怖かった」
(季語:ショック療法→ギミギミショックトリートメント→うるさい→夏)