デニロ

蛇の穴のデニロのレビュー・感想・評価

蛇の穴(1948年製作の映画)
3.0
1948年製作。原作メアリー・ジェーン・ウォード 。脚本フランク・パートス、ミレン・ブランド。アナトール・リトヴァク監督作品。大昔、テレビの深夜放映でアナトール・リトヴァク監督作品のメロドラマを観てひとり滂沱の涙を流した。それ以降彼の名前を見つけるとふらふらと観に出掛けてしまう。今回は、シネマヴェーラ渋谷「オリヴィア・デ・ハヴィランド追悼 女優姉妹の愛と相克」での鑑賞。劇場チラシの惹句が、「精神を病んだ女性が、医師と共に自らの過去を探っていくドラマ。神経衰弱になり、ときおり正気を失うデ・ハヴィランドの壮絶な演技が見もの。さらに見ものなのが、残酷な看護婦、狂ったダンスパーティーや重症患者を入れる“蛇の穴”など、今ではとてもムリな恐ろしい精神病院の描写。」ということなので、危険を冒しても観ずにはいられない。

大昔、いや、今でも着々と地ならしして進行している気配があるのだが、保安処分という権力者がなんにでも使えるような処分を国会に上程しようという動きがあった。その頃、その動きに反対していた刑法学徒が精神障がいの実態を知る為精神病棟に出掛けていた。曰く、精神を病んでいる人はおとなしく、凶暴性を感じられず、目が澄んでいて美しかった云々と話していた。わたしは大熊一夫「ルポ 精神病棟」の中で紹介されていた拘束着を着せられ、ベッドに縛り付けられ云々が強烈で、彼は見学用にソフトな部分を見せられたんじゃなかろうかと訝っていた。というよりも、きっと彼の様に権力に逆らうものを保安処分したいんだろうな、と思ったものです。

さて、本作で描かれている病棟はわたしの思い描いてたそのものでしたが、残酷な看護婦、狂ったダンスパーティは誇大だなあ。で、オリビア・デ・ハヴィランドはどうなるんだと、徐々に狂気が増して遂には転げ落ちていくのだろうと思って嫌な気分になっていると、最後は、え、それはそれで劇的な大転回。

ところで本作が作られた背景は何なのだろうか調べると、何と原作者メアリー・ジェーン・ウォードの自身の体験小説の映画化のようだ。精神病院話の需要があったんだろうか。
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